情報・データ

TCFD提言に沿った情報開示

はじめに

「当社グループは、『顧客第一主義』『共存共栄』『人間尊重』『堅実経営』『創意工夫』という経営方針のもと、グループの強みを活かしながら、地域の一員として社会課題に取り組むことで、企業価値の向上と持続的な社会の実現への貢献を目指す」ことを当社グループのサステナビリティ方針として定めました。

当社は2023年1月、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同しました。TCFD提言の開示推奨項目に沿って、継続的に開示内容の充実を図ってまいります。

TCFDとは

TCFDは、G20(金融・世界経済に関する首脳会合)の要請を受けた金融安定理事会(FSB)により設置されました。TCFDは2017年6月に最終報告書(TCFD提言)を公表し、気候変動が企業の財務に与える影響について「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4項目での情報開示の枠組みを示し、開示を推奨しています。

ガバナンス

<経営に関する重要な事項として適切に監督するための体制>

当社グループは、気候変動問題を含むサステナビリティに関する重要な事項を審議するため2022年3月にサステナビリティ委員会を設置いたしました。サステナビリティ委員会は、内容の重要性に鑑み必要に応じて、審議内容を取締役会に報告し、取締役会は、経営に関する重要事項を決定するとともに、業務執行の監督を行います。

<経営者の役割>

サステナビリティ委員会は、代表取締役社長執行役員を委員長とし、委員は取締役(社外取締役を除く)、執行役員等により構成されます。委員長および委員は、サステナビリティに関する計画の立案、目標の設定や進捗管理等に関する審議を行います。また、サステナビリティ委員会には担当執行役員を置いております。担当執行役員は委員会の活動を中心となって推進いたします。

戦略

<気候変動によるリスクと機会の特定における長期の考え方>

当社グループは、気候変動によるリスクと機会が、当社グループの事業活動に長期間にわたり影響を及ぼす可能性があることから、経営に関する重要な事項のひとつであると考えております。当社グループは、気候変動が当社にもたらす影響を想定することで、気候変動による重要なリスクと機会の特定を行っております。

<気候変動によるリスクと機会が事業・戦略・財務計画に及ぼす影響>

当社グループは、気候変動が当社にもたらす影響を考察するため、長期的に気温が上昇した2つの世界を想定し、想定した世界における2030年時点の主なリスクと機会を特定しました。分析にあたっては、複数の既存シナリオ(※)を参照し、分析の対象は当社グループの主力である百貨店業としました。

(※)当社は、以下のシナリオを参照しております。

想定する世界 想定する主な影響
2℃未満 世界の平均気温の上昇を産業革命前から2℃未満に抑えることを達成する世界
(2015年に国際社会が「パリ協定」で合意した世界共通の長期目標)
・気候変動対応に向けた厳しい法規制
・温暖化抑止に向けて進む技術革新
・高まる消費者の環境意識
・環境への取組みが企業価値へ影響
4℃ 主に現行の政策・制度が継続することによって温室効果ガスの排出量が増加し、世界の平均気温が産業革命前に比べ、4℃前後上昇する世界 ・進展する温暖化
・甚大な被害をもたらす自然災害の多発
・自然災害等による顧客の来店機会、購買マインドの変化

<2℃未満の世界>
・IEA(国際エネルギー機関)発行のWEO(世界エネルギー展望)
 SDS(Sustainable Development Scenario)とNZE(Net Zero Emission by2050 Scenario)
・IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の RCP(代表濃度経路シナリオ)8.5
<4℃の世界>
・IEA発行のWEO STEPS(The Stated Policies Scenario)
・IPCCのRCP2.6

特定したリスクと機会が当社グループの主力である百貨店業に与える影響は、以下のとおりであると考えております。なお、影響の大きさは矢印で定性的に示しております。
特定したリスクの低減に努め、機会を活かすことによって事業活動を通じた持続的な成長を目指していきます。

分類 特定した事項 影響度
2℃未満の世界 4℃の世界
リスク 移行リスク〔1〕 政策・法規制 ・炭素税の導入、温室効果ガス排出削減に向けたエネルギー調達等に伴うコストの増加
・法規制導入等による設備投資コストの増加、オペレーションコストの増加
市場 ・環境課題への対応等の遅れによる企業価値の毀損、信用失墜、顧客の離反に伴う売上の減少
・平均気温の上昇に伴う消費者の外出減、来店客の減少
・異常気象による商品価格の上昇に伴う顧客層の縮小、売上の減少
物理リスク〔2〕 ・大規模自然災害の発生に伴う店舗閉鎖、サプライチェーンへの影響等による、売上の減少
・自然災害の強度の増大による設備保全コストや、店舗被害・商品損害等の復元にかかるコストの増加
機会 エネルギー源 ・省エネルギー技術の普及に伴う電力使用量の減少によるコストの削減
商品・サービス ・環境配慮型消費への関心の高まりに対応した商品の販売・サービスの提案等による売上の拡大
市場 ・環境課題の解決に向けた事業活動を通じた、ステークホルダーからの評判向上による来店客の増加

〔1〕移行リスク:気候変動を緩和することを目的とした低炭素社会への移行に伴うリスク
〔2〕物理リスク:気候変動に伴う災害等により顕在化するリスク

<機会に基づく戦略・取組み>

1)脱炭素社会への貢献
当社は、省エネルギー活動と設備更新による電力使用量の削減や再生可能エネルギーの活用等による、温室効果ガス排出量の削減を推進し、脱炭素社会へ貢献をしてまいります。
※2022年度から当社の店舗や事務館の一部で再生可能エネルギーの活用を実施しております。

2)環境配慮への取組み
松屋銀座は、公益財団法人日本環境協会が制定するエコマーク「小売店舗」の認定基準を満たし、2022年3月25日に認定を受けました。エコマーク「小売店舗」認定基準は、環境に配慮した商品を幅広く揃え、店舗の運営における環境配慮や消費者が参加するエコ活動の見える化を実施する等、消費者と一体となって環境に配慮した活動を推進している店舗に付与されるものです。松屋銀座では、環境に配慮した商品の充実、地域社会の一員として環境保全活動に積極的に参加する等、あらゆる機会を通じてつくり手と共にその大切さを伝えていく取組みを、引き続き推進してまいります。

■エコマーク取得に関する詳細は、当社ウェブサイトにて開示しております。
詳細はこちらから

3)サステナブルな独自商品の開発
当社は2021年8月、鉱山を採掘することなく「研究所(ラボ)」で作られる、天然ダイヤモンドと同じ組成の合成石を使用したジュエリー(ラボグロウンダイヤモンド)の新ブランド「ENEY」を立ち上げております。引き続きサステナブルな商品・サービスの開発や販売に取り組んでまいります。

■「ENEY」の詳細は、当社ウェブサイトにて開示しております。
詳細はこちらから

4)地域共創プロジェクト
2020年4月からスタートした「松屋の地域共創プロジェクト」は、日本の各地で継承されている伝統工芸・産業・文化を、絶やすことなく新たな機会創出と発展へ繋げることを使命としております。地域の魅力、伝統に根ざした真摯なモノ作りとその背景を、店内装飾やショーウィンドウの演出に用いるだけではなく、インスタレーションで使用した装飾物を他社へ貸与することで、日本全国に本プロジェクトを普及、推進させ、本質的な持続、循環を目指しております。

■地域共創プロジェクトの詳細は、当社ウェブサイトにて開示しております。
詳細はこちらから

リスク管理

当社グループは、サステナビリティ委員会が中心となり、気候変動によって事業活動が受ける影響の把握と評価を、以下のプロセスに基づいて行っております。

【プロセス】
・気候変動に関する規制や事業への影響等の情報収集
・気候変動に関するリスクと機会の抽出
・抽出したリスクと機会の影響度を検討し、重要なリスクと機会を特定
・特定した重要なリスクと機会の影響度を評価

サステナビリティ委員会は、評価したリスクと機会を各部門・各グループ会社等に共有するとともにリスクの低減と機会の活用を推進します。
また、サステナビリティ委員会は内容の重要性に鑑み必要に応じて、審議した内容を取締役会に報告してまいります。

指標と目標

<リスクと機会の評価に用いる指標>

気候関連のリスクと機会を管理するため、主力である百貨店業のScope1、2の温室効果ガス排出量を指標として定めています。

<リスクと機会の管理に用いる目標>

2030年に2013年度比50%の温室効果ガス排出量の削減を目標に、具体的な取組みを進めております。
また、日本政府が発表した「2050年カーボンニュートラル宣言」の実現に貢献できるよう、2030年以降も温室効果ガス排出量の削減に努めてまいります。

【Scope1、2温室効果ガス排出量の実績と目標】単位:t-CO2

2013年度 2023年度 2030年度
Scope1 464 447 温室効果ガス削減目標
Scope1、2▲50%
(2013年度比)
Scope2 10,093 6,795
Scope1、2合計 10,557 7,242

※2021年度データより、フロン類の排出量を集計・開示の対象に含めています。2023年度フロン類の排出実績は、Scope1 447t-CO2のうち120t-CO2です。

【過去実績】単位:t-CO2

2014
年度
2015
年度
2016
年度
2017
年度
2018
年度
2019
年度
2020
年度
2021
年度
2022
年度
Scope1 464 503 463 455 449 469 325 395 421
Scope2 9,511 8,489 10,037 9,720 9,356 8,758 7,440 7,674 7,515
Scope1、2合計 9,975 8,992 10,500 10,175 9,805 9,227 7,765 8,069 7,936

※算定範囲は主力である百貨店業としております。
※Scope2はマーケット基準で算定しております。
※賃借等の理由により電気使用量を正確に把握することができない拠点の排出量は、概算で把握しております。

脱炭素社会への貢献

当社は、省エネルギー活動と設備更新による電力使用量の削減や再生可能エネルギーの活用等による温室効果ガス排出量の削減を推進しております。

LED化への取り組み

松屋銀座では、照明の完全LED化に向けて継続して取り組み、現時点で93%まで進捗しております。
また、天井照明に先んじて2001年より外壁照明のLED化に取り組み、2006年9月に終了いたしました。
電気使用量の削減による環境にやさしい店づくりを実践しております。

再生可能エネルギーの導入

2022年4月より、マロニエ通り館と松屋アネックスビルに再生可能エネルギーを導入いたしました。
当社の2030年の温室効果ガス排出量削減目標に向けて取り組んでまいります。

銀座店のエコマーク取得

松屋銀座が、公益財団法人日本環境協会が制定するエコマーク「小売店舗」の認定基準を満たし、2022年3月25日に認定を受けましたのでお知らせいたします。エコマーク「小売店舗」認定基準は、環境に配慮した商品を幅広く揃え、店舗の運営における環境配慮や消費者が参加するエコ活動の見える化を実施するなど、消費者と一体となって環境に配慮した活動を推進している店舗に付与されるものです。
松屋銀座では、環境に配慮した商品の充実、地域社会の一員として環境保全活動に積極的に参加するなど、あらゆる機会を通じてつくり手と共にその大切さを伝えていく取り組みを、従業員一同、推進してまいります。

エコマーク認定情報

エコマーク「小売店舗Version2.1」
認定番号:第21-501-003
認定日 :2022年3月25日

エコマーク取得の目的

従業員の意識向上を図り、品揃えや催事等において環境へ配慮した企画に組み込む。

松屋銀座での環境への取り組みの一例

【お客様向け】
●環境にやさしいオーガニックやリサイクル素材などエシカルな商品を紹介する全館プロモーションの定期的な実施。
●環境にやさしいオーガニックやリサイクル素材などエシカルな商品を紹介する全館プロモーションの定期的な実施。(右写真)
●銀座ミツバチプロジェクトとの協働により、ミツバチが集まる屋上菜園の設置とその蜂蜜を使用した商品化。
●著名デザイナーとコラボレーションしたマイバッグの開発と販売。
●ギフト商品の簡易包装の推進によるスマートラッピング、廃棄物削減への取り組み。
●商品を長くご愛用いただくためのリメイク、メンテナンスコーナーの展開。
●ヴィンテージ&リユース商品の定期的なイベント展開。
●日本各地の伝統工芸を取り入れたインスタレーションを活用した地域共創装飾プロジェクトの実現。

【従業員向け】
●開店前の店内放送や朝礼、ポスターなどを通じて、廃棄物排出量・エネルギー使用量の情報を開示し、ごみの分別収集や節電などの持続的な啓蒙活動。

【その他】
●30年以上前から事務館の軒下にツバメが営巣。2019年には人工巣を設置し、生息地を確保。
●店舗・事務館の一部に再生可能エネルギーを導入。
●本年3月、従来の環境委員会を改組しサステナビリティ委員会を新設。ESG経営の推進を図る。

ペットボトル減容回収機

ペットボトル減容回収機の導入

当社では、資源の有効活用による温室効果ガス排出量の削減と、従業員の環境への意識醸成のため、2024年4月より社員厚生施設にペットボトル減容回収機「ボトルスカッシュ」を導入いたしました。
回収機に投入し、減容されたペットボトルは、良質な再生ペレット資源として食品トレイメーカーに引き取られ、当社の食品テナントも利用している食品トレイに再生されます。

回収実績

期間 回収量(本) CO2削減量(㎏-CO2)
2024年4月―8月 45,672 1,466
45,672 1,466
※削減量は概算です。