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森さんちに、おじゃましました “北欧” 経由、暮らしを楽しむ「これでいいんだ!」のアイデアvol.31

プロフィール
森 百合子mori yuriko
北欧5ヶ国で取材を重ね、旅や暮らし、デザインの情報を中心に発信。著書に『3日でまわる北欧』(トゥーヴァージンズ)、『北欧おみやげ手帖』(主婦の友社)、『いろはに北欧 わたしに“ちょうどいい”旅の作り方』(ダイヤモンド・ビッグ社)ほか。執筆活動に加えて、NHK Eテレ『趣味どきっ!』、NHK 総合『世界はほしいモノにあふれてる』などメディア出演や講演を通じて北欧の魅力を伝えている。

庭と向きあう

いまの家で暮らして今年で20年になります。最初に移り住んだ2003年の秋、家の状態といえば床も壁も抜かれ、「本当にここで暮らせるのか?」という状態でしたが、そこから4回のリノベーションを繰り返して、いまはとても住みやすくなりました。 4回目のリノベーションが終わって、気になりだしたのが庭です。かつての住人が細工として埋めていた大きな枕木は腐食が進んであちこちの凹みがひどく、なんとかせねばと思いつつ後まわしになっていた庭。コロナ禍もあって家にいる時間が多いならと、移り住んで17年目の春に、えいやっと手をつけることにしたのでした。


住まいやガーデニングの本を見て「こういう庭にしたい」と憧れていたのは、芝生に飛び石。ガーデニングの知識も経験もないけれど、いまやらねばもうこの先やらないかも……との思いもあって、造園もできる庭師さんに相談しながら庭づくりをスタートしました。枕木の撤去や土のならし、芝生張りなど大仕事はすべておまかせだったので、私のしたことといえば飛び石の形と配置決めくらいでしたが。


庭師さんが「この庭に似合いそう」とラベンダーやルピナスなど好みの花を見繕って植えてくれた花壇も素敵で、なんといっても玄関を開けてぱっと目に入る芝生のグリーンが、気持ちいい。すごく、いい。と思っていたのもつかの間……庭の維持って難しいー!

よい季節になったなあ、なんて呑気に構えているとあっという間にボウボウに生い茂っていく植物たち。当たり前のことですけれど、自然は待ってくれない。実がなった!と喜んでいたら旬を逃してしまったベリー。きれいに咲いた花を家に飾ろうかしらと思っていたら強風であっという間に散ってしまい、なぎ倒された植物を見て、こういう時は添え木をしてあげればよかったのねと後悔したり。いまちょっと忙しいし……と人間の都合で時期を逃したらあっという間に茂るし、枯れるし、倒れる。


私には庭はまだ早かったのでは、と植物に申し訳ない気になることもありますが、それでも冬に植えた球根や種が数ヶ月のうんともすんとも時期を経て芽を出した時の嬉しさったら、ありません。前シーズンに植える時期を逃して再挑戦した大好きなムスカリが、この春先に次々と咲いていくのを見た時、やっぱり庭は……いい!としみじみ思いました。その後、垣根に沿うように背の高い植物を植え、手前には背の低い植物を植えたはずが、手前の植物がやたらニョキニョキと育ってきたのには唖然としましたが、まあ、まだガーデニング2年生だから仕方ない、とだんだんこちらも図太くなってきました。


北欧のデンマークやスウェーデンでは貸しガーデンの仕組みが普及しています。都市部のアパートや集合住宅など庭のない家に住む人が、国や自治体(たまに私有地もあります)から一区角ずつ安価に土地を借りて、週末や余暇に庭いじりを楽しむのです。北欧の都市部には自然豊かな公園もたくさんありますが、自分で手をかけて付き合う庭の存在はまた違うもの。人々の暮らしにかかせない場所として貸しガーデンの土地は私有地であっても勝手に売買してはいけない法律もあるそうで、こういう区域を国がしっかりと守っているのはいいなあと思います。

敷地内にはたいてい小屋があり、中で休憩することもできますし、庭にテーブルを出してコーヒーを楽しむ姿も。庭ごとに植栽も小屋の風情も異なり、きっちり整えられている庭もあれば、「庭っていうか……森かな?」と思うようなワイルドな庭もあります。いま改めて訪れたら「これでいいんだ!」を連発しながら、それぞれの庭のあり方をより一層楽しめるに違いありません。




庭仕事をしていると、気になって出てくる猫のホタテ。庭の飛び石も気に入っているのか、よく上に座っています。

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