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ファッションライターLulu.の「美しいは嬉しい」vol.4
ファッションって知的好奇心を満たし喜びをもたらしてくれるんです。内面のいちばん外側がファッション。
(本記事でご紹介するアイテムは、松屋でお取り扱いのないものもあります。)
プロフィール
初夏の香り② / 「フエギア 1833」
こんにちは。 今回は「フエギア 1833」からふたつの香りをご紹介します。 昨年麻布台ヒルズにオープンした国内3店舗目となる「フエギア 1833 麻布台」でお話を伺ってきました。

2010年、ブエノスアイレスでジュリアン・ベデルにより創業された「フエギア 1833」。
各店舗はそれぞれの地域ごとに異なるコンセプトをもち、その土地の伝統様式を取り入れたデザインが施されます。ツリーハウスがテーマとなった麻布台では、日本の杉材を使用した内壁、窓に描かれたフィッツロイの麓を眺め、丹念に調整されたジェネレックスピーカーから流れる音楽に耳を傾けます。店内に併設されたインフュージョンバーは、厳選ワインに酔いしれながら、至福のひとときを過ごせる空間です。

ジュリアンは調香師であると同時に、アーティスト、弦楽器製作者、更には研究者でもあります。
自分が心動かされたものを表現していく人=アーティスト、と私は解釈していて。探究心と好奇心に従い、自らが体験し感じたことだけが持つ説得力。圧倒的熱量は人の心を動かします。

19世紀、英国の司令官ロバート・フィッツロイによって誘拐されたティエラ・デル・フエゴの先住民の少女フエギア・バスケットは、1833年に故郷に戻るも家族に勘当されてしまいます。ブランド名にインスピレーションを与えたのが、この帝国主義の影の部分を象徴する物語。
闇がなければ光は存在できない、逆も然り。ものごとの在り方がブランド名に落とし込まれています。

2004年に芳香分子が人類の脳や精神に大きく作用するという研究で、生理学者リンダ・バック博士がノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
この研究結果が、ジュリアンの香りに対する探究心をより深めるきっかけとなります。

フエギア 1833 の植物研究の大半はジュリアンの調査旅行から始まります。
アルゼンチンのパタゴニア地方から世界へ。ジュリアンの選んだ植物の大半はこれまで香水に使われていないもの。

“薬草の魅力とは、固有の香りを持つものが多いこと、また香りを持つ植物は通常有益あるいは活発な特性を持っていることです。これらの特性は揮発性のものが多く、必ずしも香りではなく、インパクトを与えることができるのです。”ージュリアン・べデル
錬金術師という言葉が浮かんだ。錬金術って意識を拡大すること。想像なくして創造はできない。ものごとは見えない世界(意識)から始まり物質化していく。そんな風に私は感じています。

“私たちが誇りとしているのは、最初から最後まで自分たちの手で香水を作っているということ。当社で作るすべての香水は、植物の調査から製造まで-原料を抽出し、混ぜ、調合し、ボトルに入れるまでの全工程を当社で行なっています。”ーフエギア 1833
創業者のビジョンが最終段階まで貫かれています。

さて、梅雨の時期にこそ纏いたい香りが〈Pampa Húmeda(パンパ ウメダ)〉。
果てしない緑、湿度をたっぷり含んだ草原の香り。仄かなセージが懐かしさを湛えた山の朝を運んできてくれます。香りは湿度によって感じ方が違います。香りで湿度を楽しめるのは梅雨の時期ならでは。

そして梅雨からカラリとした夏に突入したならば〈Pampa Seca(パンパ セカ)〉。
こちらは乾いています、からっからの晴れ。重厚感のある緑を感じさせるのはセリ科のガルバナム。湿度あるパンパから乾燥したパンパへの繋がりは美しい。

製造時に入手できる最高峰の天然素材を使い、毎回400本前後の生産となるフエギアの香水。約120種類の香りの中で、知識と香りに対しての熱量の高いスタッフが新しい世界を引き出してくれます。

ジュリアンは香りという見えないけれど確実に存在するものを通し、私たちの心を動かしてくれます。
いつも手にある四角いものに自分を占領させてしまった私たちは「考えないこと」に慣れてしまった気がします。「探れ、感じろ、感覚を取り戻せ。」そんな言葉が頭の中に響きました。

香りは記憶。香りによって誰かを思い出したり、何かが蘇ったり、どこかに行きたくなったり。香りは時空を超えてくれる。
そんな一瞬を体感しにぜひフエギア 1833へ。

フエギア 1833 麻布台
所在地:東京都港区虎ノ門5-9-1 ガーデンプラザ地下2階
営業時間:午前11時―午後8時
TEL:03(6809)1771