頭からつま先まで、「ドレスアップラウンジ」のポテンシャルを活かした理想のスーツスタイルを提供

シューフィッター真中 弘毅

自主運営部 紳士・学生服課 紳士雑貨・ドレスアップラウンジ・学生服係/主任。2017年に入社し、紳士部門で紳士靴を担当。
ショップ管理部門、婦人服、宝飾・時計担当を経て、2022年より再び紳士部門へ。
純喫茶やクラシックな建築・ホテルなど、古いものをこよなく愛している。

頭からつま先まで、「ドレスアップラウンジ」のポテンシャルを活かした理想のスーツスタイルを提供

松屋銀座の5階は、紳士服を中心に鞄、靴など上質な紳士向けアイテムが揃うフロア。その一角にある、スーツスタイルを提案するドレスアップラウンジで主任を務めるのが、真中弘毅さんです。
「シューフィッター」の資格を持ち、頭からつま先までトータルでアドバイスを行う真中さんに、靴選びのポイントやドレスアップラウンジの魅力、仕事での心構えのほか、ご自身のスタイルを形作るものごとについて伺いました。

目次

靴選びはサイズや製法がカギ。
シューフィッターとして説得力のあるご提案を

――真中さんは今年で入社8年目で、今はスーツを中心に紳士アイテム全般を担当されているそうですね。今年3月には、「シューフィッター」の資格を取得されたとか。どのような資格なのでしょうか。

真中:シューフィッターは、足と靴に関する専門知識を持ち、お一人お一人の足型に合った靴を選ぶ専門家が持つ資格です。目的や用途に合わせたデザインの選び方、コーディネートの仕方など、靴にまつわるあらゆる悩みやご要望にお応えします。

特にスーツスタイルでは、靴選びは重要な要素。いくら良いスーツを着ていても、靴のデザインやカラーが合っていなければ全体のバランスが崩れてしまいます。また、サイズが合わない靴を履くと、足だけでなく体全体に影響が出ることもあるので、そういう意味でも大事なアイテムと言えます。

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――どんなきっかけで資格を取得することにしたのですか?

真中:これまで靴や鞄、ドレスアイテムを担当するなかで、靴の資格を取得して、紳士服のトータルな提案力に一層磨きをかけたいと思ったことがきっかけです。実際に資格の取得後は、単に見た目だけでなく、その方のサイズや足の特徴、用途やシーンをふまえて、より説得力のあるご提案ができるようになったと感じています。

――ぜひ、革靴選びのポイントを教えてください。

真中:革靴は多くのデザインやカラーがありますが、やはり大切なのはサイズ選びです。革靴の場合は、足幅・かかと・履き口のサイズが合っていて、靴の中で足がしっかりとホールドされている状態が正しいフィッティングです。例えば、カジュアルな靴を履き慣れている方の多くは、適正サイズよりもゆるめのサイズを選ぶことが多いのですが、実は革靴の場合は、スニーカーよりも1~1.5cmほどサイズが小さくなることがあります。つまり、お選びになる靴によって適正サイズは変わるので、表記サイズにとらわれずにポイントをおさえてサイズ選びをする必要があります。

また、デザインや素材、製法といった面で、お一人お一人のライフスタイルに合った靴をご提案するように心がけています。例えば、営業職でたくさん歩くという方には、アッパーとソールを接着剤でくっつける「セメント製法」の靴をおすすめすることが多いです。耐久性は縫い合わせる製法よりも劣りますが、軽量で屈曲性に優れているため、長時間の歩行も快適です。

他方で、良いものを長く使いたいなど、本格的な作りをお求めになる方には、革靴で最も伝統的な製法である「グッドイヤー製法」の靴をおすすめします。複雑な縫い合わせが施されたこの作りは、圧倒的な堅牢性を備え、ソールを丸ごと交換するオールソール修理が可能なため、メンテナンスしながら長くお使いいただくことができます。はじめはソールが堅い印象ですが、履くほどに屈曲性が良くなったり、天然コルクでできたインソールがその人の足に合わせて沈みこんだりなど、履き心地が増していくのが特徴です。

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――製法によって、持ちが違うんですね。ちなみに、お持ちの資格がプライベートでも役立ったことはありますか?

真中:同僚や先輩・後輩、友人など、身近な人の靴のフィッティングをしてあげられることでしょうか。靴に関するいろいろな悩みを聞いて、中敷きパーツなどを使って調整してあげています。先日も靴がゆるくて悩んでいた知人に「靴が勝手に脱げなくなった」と喜んでもらえました。

 

本物の良さがわかる松屋銀座のお客様に「真中さんだから買った」
と言っていただくことが喜び

――真中さんは、もともとご自身で希望して紳士部門に配属されたそうですね。現在の売場を希望された理由は?

真中:学生時代から古着を中心としたファッションが好きだったこともあり、入社時はクラシックなものからトレンド感のあるものまで多様なアイテムやブランドが集まる紳士服売場を希望しました。

なかでも現担当の「ドレスアップラウンジ」のような「自主編集売場」は、百貨店の社員が自ら品物を揃え、自らお客様へご提案できることを魅力に感じています。頭からつま先まですべてのアイテムと、さまざまなブランド・メーカーの品物を取り扱う紳士雑貨・ドレスアップラウンジ売場は、お客様自身のコーディネートや大切な方への贈り物など、あらゆるご要望にトータルでお応えできるポテンシャルを秘めていると感じています。

――今日も素敵なスーツですよね。もともとドレスアップアイテムにも興味があったのですか?

真中:興味を持ったのは、入社後にスーツを着る機会が増えたことがきっかけです。スーツの歴史を紐解いていくと、時代ごとにシルエットやスタイルが異なることを知り、もともと好きな古着にも通じる奥深さを感じたんです。なかでも私が惹かれたのは、デザインやシルエット、素材使いなどが最も華やかで贅沢さを感じる1930年代のスタイル。

当時は、着こなしのルールやシーンごとのドレスコードが決まっていて、その中で「いかに自分らしく装うか」を工夫や遊び心をもって楽しむスタイルに魅力を感じました。

――ファッションに歴史を取り入れるのって、なんだか粋ですね。お仕事の中で、プロとして意識していることやこだわりがあれば、教えてください。

真中:ドレスアップラウンジのような自主編集売場は、特定のブランドのアイテムを求めて来るというよりも、漠然とした商品のイメージを持っていらっしゃる方が多いように感じます。だからこそ、お客様のお話やご要望をよく聞き、お持ちのイメージを具現化できるよう、用途や好みなどを引き出しながらこちらがリードすることを意識しています。

また、基本的なことですが「思いやり」と「気遣い」も意識しています。お客様が嬉しい、楽しい、あるいはもの足りないと感じることなど、あらゆる場面でお客様に共感し、同じ気持ちになって考えることで、ほど良い距離感が生まれるのではないかと思うんです。

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――他に、表からは見えにくい部分で意識していることはありますか?

真中:「品と佇まいのある人」でいることでしょうか。所作や話し方、身なりや教養など、品と佇まいをもたらす要素はさまざまあると思いますが、やはり仕事中にお客様から見えるときだけ意識するのでは、身につけることは難しいと思うんです。日頃の生活や仕事中のバックヤードなど、見えないところでも「見られている意識」を持って行動することを心掛けています。

――接客のほか、イベントや催事の企画・運営、後輩の指導・育成まで幅広く担当されているそうですね。「この仕事をしていて良かった」 と感じる時は?

真中:やはり、お客様に自分の提案を喜んでいただけたときでしょうか。最近嬉しかったのは、購入予定の革小物だけでなく、おすすめした鞄までお買い上げいただいた方から、「真中さんだったから、思わず買ってしまった」とお客様アンケートでお声をいただけたことです。また、「真中さんがいる日に行くよ」というお言葉など、人ありきで買っていただけていると感じられるときは、非常にやりがいを感じます。

それから、一年ほど前に1920〜30年台のアメリカンクラシックの世界観を現代に創り上げるブランド「ADJUSTABLE COSTUME(アジャスタブルコスチューム)」を見つけて、ドレスアップラウンジでの常設展開を実現したのですが、その際に多くの反響をいただけたことも嬉しかったですね。松屋銀座のお客様は、本物の良さをわかってくださるのだと改めて実感できて感激しました。

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公私共にファッションへの造形を深め、売場の名物のような存在を目指したい

――往年のスタイルが好きとのことでしたが、プライベートでもそうしたファッションでいることが多いのでしょうか?

真中:そうですね。仕事とプライベートで服装が変わらないと驚かれることがあります(笑)。学生時代から古着を含めて古いものに対する漠然とした憧れがあり、今では休日もドレススタイルをはじめとするクラシックなファッションで過ごし、昔ながらの喫茶店や老舗酒場、古い建築や庭園を巡っています。旅行のときは、老舗旅館やクラシックホテルを求めて行き先を決めることが多く、行き先をイメージしてコーディネートを組むのも好きですね。

最近は会社の部活動をきっかけに、学生時代にやっていたテニスを再開して、そこでもプレーだけでなく、装いをはじめとする昔のスタイルやルーツなども含めて楽しんでいます。プライベートでもさまざまな歴史やその背景を知ることが、接客の際に商品の魅力をより深くお伝えするのに役立っていると感じます。

頭からつま先まで、「ドレスアップラウンジ」のポテンシャルを活かした理想のスーツスタイルを提供

左は群馬県の四万温泉にある旅館「積善館」。右は松屋銀座のテニス部での一枚。

――今後のお仕事の上での展望を教えてください。

真中:今後も現場に出ながら、私という「人」に魅力を感じてもらえるようになることが目標の一つです。「あの人に聞いたら、いいものが見つかるかも」とお客様から期待を寄せていただき、店の名物のような存在になれたら嬉しいですね。そのためにも、今は提案力を磨きながら、紳士服に関する知識や経験、スキルの幅を広げていくことを目指しています。

最近は、小売業の国家検定資格である「接客販売技能検定」のメンズファッション2級の取得にもチャレンジ中です。今後もこうした取り組みを通して、自身の提案に一層の説得力をもたせるための勉強を続けていくと同時に、お客様お一人お一人のお話により耳を傾け、パーソナルなご案内ができる機会を増やしていきたいと思っています。

――では、最後にお客様へのメッセージをお願いします。

真中:クラシックからトレンドスタイルまで揃う松屋銀座の紳士売場は、モノも人も他にはない独自性が魅力です。ご自身のコーディネートからギフトまで、どのようなご要望でもお客様にとって素敵な「発見」を提供できる自信がありますので、ぜひ足をお運びいただけたら嬉しいです。

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