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森さんちに、おじゃましました 暮らしを楽しむ「これでいいんだ!」のアイデアvol.17

プロフィール
森 百合子mori yuriko
北欧5ヶ国で取材を重ね、旅や暮らし、デザインの情報を中心に発信。著書に『3日でまわる北欧』(トゥーヴァージンズ)、『北欧おみやげ手帖』(主婦の友社)、『いろはに北欧 わたしに“ちょうどいい”旅の作り方』(ダイヤモンド・ビッグ社)ほか。執筆活動に加えて、NHK Eテレ『趣味どきっ!』、NHK 総合『世界はほしいモノにあふれてる』などメディア出演や講演を通じて北欧の魅力を伝えている。

デザインが伝えるもの

私が北欧に興味をもったきっかけは、フィンランドの建築家アルヴァ・アアルトのデザインを見たことでした。友人に連れられていったアアルトの展覧会で、代表作のひとつである図書館の波打つ天井が再現されているのを目にして、こんな建築があるのか!とあっけにとられ、いつか実物を見に行きたいと思ったのです。


左のポスターに写っているのが、波打つ天井のヴィープリ図書館。1935年に完成し、アアルト初期の傑作と言われています。初めてのフィンランド旅行でアアルトの建築を見てまわろうと計画している時に、この図書館が今はフィンランドにはないことを知りました。第二次大戦後に国境線が変わったためです。ちなみにアアルトのもうひとつの代表作であり、広く知られるスツール(右ポスター)は、ヴィープリ図書館のために制作されたもの。


長年にわたり愛用しているマリメッコのボーダーTシャツには、タサライタというシリーズ名がついています。タサライタとはフィンランド語で「均一な横縞」の意味。1968年に誕生したデザインで、ちょうど女性が社会へと進出していった時期に重なります。タサライタは男女の区別なく着られるシリーズであり、平等を謳ったデザインでもあるのです。


エストニアから持ち帰ってきた愛らしい編みぐるみは、国民的な手芸作家のアヌー・ラウドが祖国の豊かな伝統文化を子ども達に伝えようと考案したもの。胴の部分にはエストニア各地に伝わるパターンが編み込まれていて、子ども達が遊びながら自国の伝統を学べるようにと作られました。


ノルウェーの首都オスロには、ノーベル平和賞受賞者の功績を紹介するノーベルピースセンターがあります。2005年に訪れた時、目を引かれたのが入口手前にあった巨大なペーパークリップのモニュメント。なぜクリップが?と不思議に思っていましたが、第二次大戦下でレジスタンス活動を続けていた教育者達が、結束を象徴するクリップを襟もとや胸ポケットにつけて闘っていたことを後に知りました。


1940年代に書かれた最初のムーミンの物語『小さなトロールと大きな洪水』は、洪水によって住む場所を追われるトロールたちの物語。つづく『ムーミン谷の彗星』では世界を灰色にしてしまう彗星への恐れが描かれ、どちらの作品からも戦争への不安が伺えます。作者のトーベ・ヤンソンは、生涯を通して反戦を掲げ、多様な存在がそれぞれに他を尊重して生きることのできる世界を描きつづけました。

素敵だな、と興味をもったデザインについて調べるうちに、思いがけずその裏側にある社会情勢や歴史を知ることがあります。デザインは時に世界を知る窓となります。 デザインは日常を豊かにしてくれるものであり、世界をもっと知りたい、わかりたいと思った時に助けてくれるきっかけでもあるのです。

冒頭にご紹介した図書館は、戦火をまぬがれつつも一時期はひどく荒廃してしまい、90年代に大規模な修復が行われました。現在はかつての姿に近い状態に復元され、地元の人達に愛されているという図書館を、いつかぜひ訪れてみたいものです。


vol.16「よい「白」を選ぶ」はこちら

デザインを通じた学びはこんなところでも
7階デザインコレクション

デザインコレクションは1955年、日本デザインコミッティーと松屋が立ち上げたセレクトショップの草分け的存在です。その中にある、デザイン書棚のコーナーでは、デザイン、アート関連の書籍のほか、隣接するギャラリーとも連動し、展覧会に関連するカタログ、書籍なども販売しています。

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