大切なのは、お客様と愛犬・愛猫との信頼関係。
お悩みを“一緒に解決する”ことを目指したい

ペットフーディスト・栄養士矢野朋実

ご飯の窓口 by GREEN DOG & CAT 松屋銀座店勤務。
大学卒業後はパン屋に勤め、その後は介護福祉施設で栄養士として勤務。2021年に株式会社カラーズに入社し、2022年4月より松屋銀座店に配属。
お酒が好きで、松屋銀座の和洋酒売場でクラフトビールを買うことも。

大切なのは、お客様と愛犬・愛猫との信頼関係。お悩みを“一緒に解決する”ことを目指したい

松屋銀座の7階の一角には、犬や猫のフードやおやつ、生活雑貨を取り扱うほか、「ペットフーディスト」による食事相談も行う「ご飯の窓口 by GREEN DOG & CAT」があります。
今回は、犬と猫の食の専門家として働く矢野さんに、お客様やペットたちと向き合う日々について伺いました。

目次

テレビ番組で知った「ペットの食の専門家」に憧れて資格を取得

――最初に「ペットフーディスト」という資格について教えてください。

矢野:ペットフーディストは犬や猫の食性や栄養学をはじめ、療法食や手作り食、ペットフードについて幅広い知識を持つ、日本アニマルウェルネス協会が認定する民間資格です。オーナー様に対して、ペットの食事に関するお悩みにカウンセリングで寄り添ったり、オリジナルのペットフードを開発したりする際に知識を活かせる資格ですが、飼っているペットの健康のために資格を取る方も多いですね。

――矢野さんが資格を取得するきっかけはなんだったのでしょうか。

矢野:もともと「食」に興味があって、大学卒業時に栄養士資格を取得しました。そこから6年ほどパン屋で働いていたのですが、もっと栄養士の資格を活かせる仕事がしたいと思って介護施設に転職したんです。

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――その時点では、ペットではなく人間の食に関わるお仕事をされていたんですね。

矢野:そうなんです。でも、大学を卒業した後、たまたま見たテレビで「海外にはペットの栄養士がカウンセリングを通じて、それぞれのペットに合った食事を作って販売している」と知りまして。昔から動物全般が好きだったので、栄養士の資格を活かしながら犬や猫たちと関われる仕事をいつか私もしたいとずっと思っていました。

そこから時間は経ちましたが、介護施設で働いている時に日本にもペットフーディストという資格があることを知って、なんとも勉強したいと思ったんです。

――もともと栄養士の資格をお持ちだったとのことですが、ペットフーディストの勉強をされて、改めて人間とペットの食の違いは感じますか?

矢野:基本的な考え方は同じなのですが、やはり体のつくりが違うので、人間なら体内で生成できる栄養素も犬や猫は生成できないので、食事で摂取しなければいけないなど、さまざまな違いを知りました。それに、ペットの食にも薬膳の考え方があることを資格の勉強で初めて知りましたね。ペットの病気や薬膳については、今も日々勉強を続けています。

 

愛犬・愛猫の食事内容だけでなく、生活習慣や日々のケアについてもアドバイス

――松屋銀座では、ふだんはどのような業務が多いのですか?

矢野:カウンセリングを通じて、ペットオーナー様からお悩みやご要望を伺い、それぞれのペットに合った食事の提案やおすすめの商品をご紹介しています。シニアで腎臓を悪くしている犬を飼うお客様から「どういう食事がいいのか」という相談を受けることもあれば、子犬をお迎えしたばかりのお客様から「ごはんを食べない」とご相談をいただくこともあり、さまざまな方がいらっしゃいます。

ペットの病気に関するお悩みの場合は、かかりつけの獣医師さんからの指導内容を伺ったうえでご提案しています。涙やけなどのご相談も多いので、食事だけでなく、日々のケアや気を付けるべきポイントなどについてもお伝えしているんです。

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株式会社カラーズでは、自社ドッグフードブランド「yum yum yum ! (ヤムヤムヤム)」も展開

――「ごはんを食べない」というお悩みには、どのような対処法があるのでしょうか。

矢野:いつ頃から食べなくなったのかなど状況を伺った上で、ごはんの内容を変えるべきなのか、ごはんのあげ方に原因がないかを考えます。後者について、具体的におやつの量が多すぎないか、ごはんを出しっぱなしにしてないかなどを確認します。ごはんを出しっぱなしのご家庭も多いのですが、そうすると風味が落ちてしまうので、香りに敏感な子だと食べなくなってしまったり、いつでも食べられるという安心感から食べなくなってしまう場合などが考えられるんです。

――なるほど、習慣化していて、プロに言われないと気付かないこともありそうですね。

矢野:そうなんです。ですから、カウンセリングで深いところまでしっかりとご状況を聞き取り、生活環境や習慣の改善をご提案することもあります。お客様によっては、カウンセリングにかなり時間をかけることもありますね。

――業務の中で、プロとして意識されていることはありますか?

矢野:持っている知識をお教えするというよりも、お客様と一緒に問題を解決することを意識しています。私はお客様とパートナーである愛犬や愛猫の毎日が豊かになるようにお手伝いさせていただく立場ですし、私自身も愛犬がいるので、お客様に寄り添う姿勢を大切にしたいんです。

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店舗では、原材料にこだわった犬・猫用のビオフードなども取り扱っている

――一緒に解決するために、接客の上で具体的に心がけていることはありますか?

矢野:カウンセリングというとかしこまった感じがして、気軽にお話ししづらく感じてしまうお客様もいらっしゃると思います。ですから、なるべく気兼ねない会話を意識して、お客様からお話ししていただけるように質問の仕方を工夫しています。さまざまな方がいらっしゃるので、目の前のお客様が一番求めていることは何かを考えて、話しかけるタイミングや引き際も意識しているんです。

――軽くおしゃべりしたい方から真剣に悩まれている方までいらっしゃるでしょうし、お客様のお気持ちやご要望に寄り添うことを大切にされているんですね。

矢野:そうですね。結局、私たちカウンセラーが問題を解決できるわけではなくて、最終的にアドバイスを実行するのはお客さまです。私たちのご提案の結果、ごはんをよく食べてくれるようになったとしても、それはお客様がペットと向き合って挑戦して下さったからできたことで、一番大事なのはお客様と愛犬・愛猫の信頼関係なんですよね。

ですから、私はお客様の不安が解消されて、ペットとの暮らしがより楽しくなるように関係構築も含めてお手伝いしている、というスタンスを忘れないようにしています。

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――これまでで印象に残っている、お客様とのエピソードはありますか?

矢野:ハイシニアのトイプードルを飼われていたお客様で、年齢もあって腎臓が悪くなり、食べムラを心配してご相談にいらしてくださった方がいまして。

その方は、ネットや周囲からの情報を気にし過ぎて、何をあげたらいいのかわからなくなってしまったそうなのですが、「それぞれに合う食事は違うので、情報を気にしなくても大丈夫ですよ」とお伝えしました。

お話を聞いたところ、かかりつけの獣医さんからは「食べられるものをあげてください」という指示だったので、その子に合った食事をご提案したんです。そうしたら、その後もずっと通ってくださって、愛犬の体調が良い時には一緒にご来店くださったこともありました。

とても残念なことに、去年その子は亡くなったのですが……、お客様がわざわざお店にご挨拶に来てくださったんです。「当時はどうしたらいいかわからなかったけど、ここで相談することが心の支えになりました。本当にありがとう」というお言葉をいただいて、お力になれていたことがわかり、本当に嬉しく思いました。

 

仕事もプライベートも動物とふれ合う毎日。目標は、お客様がペットと楽しめるイベントの企画

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――矢野さんご自身も愛犬がいらっしゃるそうですね。

矢野:そうなんです。8歳のチワプー(チワワ×トイプードル)を飼っています。この資格を取ったことで、食事や生活面に気を付けてあげられるようになったので、愛犬の健康管理にとても役立っています。うちの子は一度ごはんを食べなくなったことがあったんですが、また食べ始めた時にお腹の負担を考えてフードをふやかして食べさせるなど、体調を考えて対処できました。友人の愛犬が体調不良になったときに、アドバイスを求められることも多いですね。

――休日も愛犬と過ごすことが多いのですか?

矢野:基本的にそうですね。仕事でもプライベートでも犬や猫たちと触れ合っています(笑)。休日は、家族と愛犬と旅行をしたり、近場にお出かけしたりすることが多いですね。犬と入れるカフェを探したり、ペット関連のイベントに行ったり、よその犬や猫も愛でたり楽しんでいます。そういうイベントで、自分が知らなかった商品やペットのケア方法に出会うと、家に帰ってから自分でも調べて愛犬に実践することもあります。

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矢野さんの愛犬で、チワプーのあられちゃん

――プライベートで吸収したことが、お仕事にも活かされているんですね。お仕事でこれからやりたいことなどありますか。

矢野:百貨店にはペットが入れないイメージをお持ちの方が多いのですが、実は松屋銀座では、ペットのお顔が隠れるサイズのバッグに入れていただければ店舗に来ることもできます(※)。ですので、お客様がペットと一緒に楽しめるイベントをもっと行っていきたいですね。スペース的に難しい部分もありますが、もっとお客様同士で繋がれて、ワイワイおしゃべりしたり、情報共有ができたりするようなイベントをいつか実現できるといいなと思っています。

(※)ペットとご来店される際には、お願い事項がございます。詳細はこちらをご覧ください。

――では、最後にお客様へメッセージをお願いします。

矢野:今はネットにたくさんの情報が溢れていて、ペットにどんなごはんやおやつをどうあげたらいいのかわからない、というお声もたくさん耳にします。確かに悩んでしまうことも多いと思うのですが、結局はお客様の愛犬・愛猫それぞれの体質によって対応方法は変わるので、日頃からその子のことをよく見てあげていただけたらと思います。

そして、些細なことでも気軽にお話ししていただけるお店でありたいと思っているので、悩まれた際には、ぜひご来店ください。予約なしでもふらっとお越しいただけますし、店舗には私以外にも経験豊富でそれぞれ強みのあるクルーがいるので、頼りにしていただけたら幸いです。

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