漢方とコミュニケーションの力で、お客様の心身の健康を支えたい

薬剤師浜洲 知

漢方みず堂薬局松屋銀座店に勤務。
2010年に株式会社ミズに入社し、調剤薬局や病院で勤務。2020年にグループ会社である株式会社漢方みず堂の薬局に異動する。
現場での接客と並行して、社員研修や新卒採用業務も経験。趣味は武道や読書、自然散策。

漢方とコミュニケーションの力で、お客様の心身の健康を支えたい

松屋銀座の7階、ライフスタイル用品などを扱うフロアに漢方相談専門の薬局があるのをご存知でしょうか。
そこで薬剤師として、お客様の心身のお悩みと向き合っているのが、浜洲さんです。
今回は、漢方薬局の薬剤師の役割や知られざる漢方の力について、浜洲さんに伺いました。

目次

総合的なサポートで心身の健康を支えることが、漢方薬局の薬剤師の役目

――漢方のお店にも薬剤師がいるのですね。改めて、薬剤師はどんなお仕事なのでしょうか。

浜洲:薬剤師というと調剤薬局にいるイメージがあると思います。調剤薬局の場合は、医師からの処方箋を見て、その処方が薬学的な観点から間違っていないか、お客様に合わない薬がないかなどを吟味するような業務が多いです。漢方薬局の場合、処方は医師ではなくて薬剤師が行う点が、調剤薬局との違いですね。

私たちは基本的にお客様のお悩みを伺って、心身ともに元気になっていただけるように、漢方と合わせて心の整え方や適したお食事、運動など養生のご提案をしています。薬のことだけではなく、心身や生活をトータルにサポートするのが私の思う漢方を扱う薬剤師の仕事ですね。

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――一般的に、薬剤師は漢方についても勉強されるものなのですか?

浜洲:ほとんどしないと思います。薬剤師の国家試験でも、漢方についてはごく一部しか出題されないので、本当に興味がない限りは勉強しない人が多いですね。正直、もともとは私も得点するために最低限の勉強をするくらいでした。

――そんな浜洲さんが、漢方薬局で働くことになったのはなぜでしょうか。

浜洲:薬剤師として働く中で、興味の対象が西洋医学から東洋医学に変わっていったんです。というのも、西洋医学は、現代科学でわかることや各部分を細かく突き詰めていくのですが、より全体的で抽象的な視点もあると、助かる方がもっと増えると感じていました。

そのような仕事を探し続けた末に、グループ会社の漢方みず堂への異動を決意しました。

――では、漢方みず堂で働き始めてから、漢方について勉強され始めたんですね。

浜洲:もともと少しずつ勉強してはいたのですが、本職になると求められるものが大きく変わってくるので、より本格的に知識を得るようになりました。西洋薬を処方する場合は、「この疾患でこの検査値なら、この薬」という明確で具体的なガイドラインがあるのですが、漢方にはそういうものは少なく、抽象的・感覚的な概念が多いです。そのため、経験値や感覚値も大事にするようになりましたね。

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組み合わせ次第で「1+1」が「2」以上の働きになる漢方の力とは?

――漢方薬局に勤務される中で、改めて漢方の力を感じることはありますか?

浜洲:調剤をする際、「1+1」をすると普通は「2」になりますが、漢方の生薬の足し算は数字通りにはなりません。組み合わせ次第で働きが大きく変わったり、少しの分量の違いで違う働きをしたりするんです。今まで扱ってきた西洋薬とは、まるで違うなと感じています。

――「1+1」が必ずしも「2」にならないというのは、具体的にどういうことでしょうか。

浜洲:一つの不調を整えるために漢方を飲んだ場合でも、体に根本的な変化が起きて、その他の不調にも作用することがあります。例えば、頭痛のために漢方を服用したら、頭痛以外の不調も軽減するケースなどです。

――そんなことがあるんですね。印象に残っているケースはありますか?

浜洲:以前、数えきれないくらいの不調を抱える20代前半の女性のお客様がいらしたことがありまして。実は、最近こういう全身に悩みを持っている方が多くいらっしゃるんです。

こういう方は体のバランスが崩れてしまっていて、体の本来の力を発揮できていない状態なので、根本から体質改善をすることが大事なんです。その方には、半年間ほど漢方を服用いただきました。

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――そんなにたくさんの不調にも対応できるんですね。

浜洲:そうなんです。でも、漢方は万能ではありません。以前、何十年も耳の不調で悩んでいるお客様が来店されたんですが、あらゆる治療を試してもダメだったようで、絶望されていました。その方が治るかどうかは正直わからなかったのですが、励まして差し上げないと、その方はもう一歩も前に進めないだろうなと感じました。でもその分、かける言葉の責任が重いこともわかっていて……。

悩んだ末、私が「良くなるまで僕は諦めません」と言ったら、お客様はその言葉に活路を見出してくださったんです。結果を言えば、今も治ったわけではないのですが、お客様が苦しい時に私の言葉が少しでも支えになったのであれば、勇気を出して良かったなと思います。

 

病は気から。長年にわたって武道で鍛錬を積み、心身の健康を維持

――ふだんの生活でも、やはり漢方の薬剤師として心身を整えることを意識されているのでしょうか。

浜洲:そうですね。社内でも漢方の勉強会や心を磨く取り組みをするなど充実しているのですが、私はそれに加えて、プライベートで「中心道」という武道を習っています。説明が難しいのですが、合気道と人材育成を兼ねたコミュニケーション力を向上させるための武道です。道場生と心身を錬磨していくことで、様々な感覚が研ぎ澄まされ、人間性を磨いていけるんです。もともと人の成長に興味があったこともあり、もう7、8年続けています。

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道場で鍛錬する浜洲さん

――では、きっとなかなかの腕前でいらっしゃるんでしょうね。

浜洲:身体操作の能力や感性は確かに上がっているんですが、中心道では段級位を上げるには技術と同時に内面も磨かなくてはいけなくて。仕事における社会的成功と、人生における人間的成功の両方が必要なんです。そのため、なかなか段位をとることができず、まだまだ成長が足りていないと実感しています。

とはいえ、この武道のおかげで以前よりはるかに心身が整い、仕事やお客様とのコミュニケーションにも、その力を大きく活かせています。今日も丹田を意識して深く呼吸しているおかげで、インタビューにも緊張していません(笑)。

 

「人が薬になる」という精神のもと、漢方や和の精神を世に広く届けていきたい

――業務の上で、プロとして心がけていることはありますか?

浜洲:母体のミズホールディングス、そして漢方みず堂では「人が薬になる」という言葉を掲げています。心が大切であり、薬だけでは不調は治らないし、予防もできないという意味です。実際、美味しくない漢方を毎日飲み続けるのは辛いと思います。そのハードルを超えるためには、私たちとお客様との信頼関係が必要です。

ですから、初めてのご来店時には1時間の相談時間をいただき、その中でどれだけお客様のことをわかって差し上げられるかを重視しています。

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――お客様と向き合って話をする時間を大切にされているんですね。

浜洲:今ご相談の中で、苦しさやお辛さなど、お客様の気持ちに寄り添い、前を向いていただけるよう、誠意をもって対応しています。そのやり取りがしっかりできると、「薬を飲む前からもう元気になった」と言ってくださる方もいて(笑)。やっぱり心と体の両方が元気になって初めて、人は本当の意味で健康になるんだと思います。

――最後に、将来の目標やお客様へのメッセージをお聞かせください。

浜洲:今、東洋哲学的な思想や日本の和の精神が、世界的にも求められていて、漢方や心と身体の調和を必要としている方は、国外にも多くいらっしゃるんです。ですので、大きな目標でいうと、日本の方々の心身の健康をさらにサポートしていくと共に、将来的には国外に向けてもサービスを提供していけたらと思っています。

当店では、体調のことだけではなく、お客様の気持ちに寄り添い、心身ともに元気になっていただくことを目指しています。何かお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。

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