時代が変わっても、銀座の老舗百貨店ならではの真心ある接客を大切に

冷凍生活アドバイザー木嶋 文子

食品部食品一課生鮮グロッサリー係。昭和58年に入社以来、40年以上にわたって食品部に所属。地下2階の生鮮食品売場では約20年働いており、現在は冷凍食品売場を担当している。プライベートでの楽しみは、近場のホテルで夫婦でゆったりと過ごすこと。

時代が変わっても、銀座の老舗百貨店ならではの真心ある接客を大切に

松屋銀座ならではの厳選された食材を扱う、地下2階の生鮮食品売場「GINZAフードステージ」。なかでも有名レストランのメニューを取り揃えた冷凍食品売場は、注目を集めています。そんな食品売場で長年勤めている木嶋文子さんは、「冷凍生活アドバイザー」の資格を持ち、お客様に寄り添った接客をしています。木嶋さんに、賢い冷凍活用術や接客の心構えについて聞いたほか、その素顔にも迫りました。

目次

ベテランが教える、時間も食材も無駄にしない冷凍活用術とは

――木嶋さんは、「冷凍生活アドバイザー」という資格をお持ちだそうですね。どのような資格なのでしょうか。

木嶋:冷凍食品についての知識や扱い方、冷凍保存の方法などを勉強することで、アドバイザーとして活動できる資格です。例えば、野菜の冷凍食品は賞味期限が1年のものが多いのですが、それは旬の時期に収穫して冷凍していて、また1年経てば旬の時期がやってくるからという理由があるんです。そうした冷凍食品の知識について学びます。

――家庭で上手く冷凍を活用するための知識についても、勉強されるんですか?

木嶋:そうですね。たくさん作って残ったから冷凍するのではなく、最初から冷凍のために多く作って、作りたてをすぐ冷凍するほうが美味しく保存できることを学びました。また、肉や魚を冷凍した場合は、肉は1カ月程度、魚は2週間くらいが目安といったように、食材によって冷凍保存期間が違うことなどを勉強しました。

ちなみに、冷凍食品は-18℃以下のものを指すのですが、0℃以下だからといって、チルド室で冷凍食品を保存する方がたまにいらっしゃいます。でも、チルド室は冷凍庫よりも温度が高いので、冷凍食品を入れると劣化が進んでしまうんです。冷凍食品を美味しく安全に食べていただきたいので、この点はお気をつけいただきたいなと思っています。

時代が変わっても、銀座の老舗百貨店ならではの真心ある接客を大切に

――資格を取得されてから、お仕事をするうえで何か変化はありましたか?

木嶋:冷凍庫の温度チェックには、厳しくなりました。あと、冷凍食品の袋がふくらんでしまうのは「昇華現象」といって商品の劣化が原因ではなく、商品についた水滴が凍ってふくらんだだけなので、品質には問題ないことをお客様にご説明できるようになりました。

それから、仕事以外でも冷凍の活用法が変わりました。例えば、ご飯は冷ましてから冷凍される方が多いと思うのですが、本当は炊き立てをラップして即冷凍するほうが、お米の香りや美味しさをキープできるんです。また、保存袋の空気をなるべく抜いて冷凍したほうがいいとか、そういう知識はプライベートでも役に立っています。

――木嶋さんがおすすめする冷凍活用術を教えていただけますか?

木嶋:資格取得のテストの時に考えたレシピなのですが、「野菜玉」と言って、キャベツやニンジンなどのちょっとだけ残ってしまった野菜をラップで包んで、小さいおにぎりのような形にして冷凍しておくんです。時間がない時には、その野菜玉を入れたお椀に顆粒だしとお味噌を加えて、お湯を注いでレンジでチンすれば、簡単に野菜たっぷりのお味噌汁ができるので、とても便利ですよ。

それから、冷凍に向いている食材があって、キノコ類などは冷凍すると、解凍する時に旨味成分が増えるんです。ですから、キノコはお安い時に多めに買って冷凍しておくのがおすすめです。

食品売場一筋、40年。お客様に寄り添うための「おせっかい」

時代が変わっても、銀座の老舗百貨店ならではの真心ある接客を大切に

――木嶋さんは入社以来、40年以上も食品部に在籍されているそうですね。

木嶋:実は、入社当時は婦人服売場が希望だったんです。その頃は、世の中に「デパ地下」という言葉もなくて、食品売場は三角巾をつけたおばちゃんが働いている所、というイメージがあったので(笑)。

でも、実際に働きはじめたら、職場の先輩方はとても優しいし、すごく楽しくて。そのうちにデパ地下ブームがやってきて、食品売場が注目されるようになったのもあり、異動希望は出さずにそのまま今に至ります。

――木嶋さんは、職場ではどんな接客スタイルなのでしょうか。

木嶋:私はすごく心配性で、おせっかいな性格なんです。これは性分で、自分がされたら嬉しいだろうなということをお客様も含めて、周りの人にもしてあげたくなっちゃうタイプで。

今までの経験上、もっとお話をお聞きすれば良かったとか、こうしておけば良かったとか、あとから後悔することがあるので、お客様に対しても、気になることはなるべく伺うようにしています。そうすると、お客様も「実はね……」と話してくださることがあるんです。

――気になることがあったら、少しつっこんだ質問もされるんですか?

木嶋:そうですね。以前、お孫さんにアイスクリームを贈りたいとおっしゃるお客様がいらっしゃいまして。でも、それがかなりの量だったんです。

「ご家庭の冷凍庫に入るかな?」と気になって、「娘さんの冷凍庫の大きさはどれくらいですか? 量を少し抑えておきましょうか?」と伺ったら、少し量を減らされた、ということがありました。

時代が変わっても、銀座の老舗百貨店ならではの真心ある接客を大切に

――木嶋さんのその心遣いに、きっとお客様もその娘さんも助けられたと思います。

木嶋:そうだと嬉しいですね。お客様の「贈りたい」というお気持ちは汲み取りたいのですが、それが結果として送り先のご迷惑になっても悲しいので。

――40年以上もお勤めだと、きっと苦労されることも多いと思いますが、休日はどんなふうにリフレッシュされていますか?

木嶋:ホテルが大好きなので、何ヶ月かに一度、自分たちへのご褒美に夫婦でホテルに一泊しています。自宅にいると、休日に「今日は何もしない」と決めても、どうしても家事をしたくなってしまうんですが、ホテルにいたら必然的に洗濯も掃除もできないのがいいんです。

チェックインしたら、夫はお酒を楽しんで、私はゆっくりお風呂に入ったり、普段は読む暇がない雑誌を読んだり、それぞれしたいことをしています。そういう非日常を楽しむのが、私にとっての最高の休日ですね。ホテルの方からしたら、「自宅の近くなのになんで泊まるんだろう?」と思っていらっしゃると思うんですけど(笑)。

時代が変わっても、銀座の老舗百貨店ならではの真心ある接客を大切に

ホテルで休暇を過ごす木嶋さん

贈り主の想いを大切に、贈り先の気持ちも想像した接客を

――普段の業務の中で、一番やりがいを感じるのはどんな時でしょうか。

木嶋:やっぱり接客ですね。商品の説明に対して「へえ〜、そうなんだ!」とお客様が納得してくださったり、商品の私なりの食べ方をご紹介したら、後日お客様から「美味しかった」とご感想をいただいたり、そういう反応があると本当に嬉しいですね。

――食料品はスーパーでも買えますが、あえて百貨店を利用されるお客様は何を求めていらっしゃると思いますか?

木嶋:最近のスーパーは品揃えも豊富になっていますが、やっぱり銀座の百貨店にいらっしゃるお客様は商品の品質はもちろん、販売員に対する期待値が高いと思うんです。「せっかく銀座に来たのだから、いいものを納得して買いたい」と思っていらっしゃるように思います。

その中でリピーターになっていただくには「この人がいるから立ち寄ろうかな」と思っていただくことが必要です。そういった意味でも、松屋銀座らしいおもてなしは大事にしたいと思っています。

時代が変わっても、銀座の老舗百貨店ならではの真心ある接客を大切に

有名レストランや人気パティスリーなど、高級感のある様々なブランドの商品を取り扱っている

――具体的に接客の中で意識していることはありますか?

木嶋:目の前のお客様が、何を求めていらっしゃるのかを先の先まで考えて接客しています。特にご進物のご相談を受けることが多いので、贈り先がご年配の方なら手間がかからず、量も多過ぎず、胃にもたれないものがいいのではないかとか、いろいろなことを考慮しています。

そのうえで、贈り先の方に「わざわざ銀座の百貨店で買って、贈ってくれたんだ」と感じていただけるような、贈り主の意向が伝わる商品をご提案しているんです。

――贈り先のことも十分に考えてご提案されているんですね。

木嶋:そうですね。あと、リピーターのお客様がされた以前のお話は極力覚えておくようにして、「前回のお買い物はいかがでしたか?」と話しかけるようにしています。初めていらっしゃるお客様は遠慮がちな方もいるので、「もしご質問がありましたら、いつでもお声がけください」と一言かけるようにしていますね。

――最後に、お客様へのメッセージをお願いします。

木嶋:銀座の百貨店でお買い物をするワクワク感や期待感をお持ちになってご来店下さるお客様にとって、商品を売るだけでなく、気持ちをハッピーにして差し上げられるようなクルーであり続けたいと思っています。松屋銀座の地下2階にいらした際にはぜひ「木嶋」をご指名ください! お待ちしております。

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