紳士靴を中心に、百貨店ならではのトータルな提案でファンを増やしたい
シューフィッター高田 将行
自主運営部 紳士・学生服課 紳士雑貨・ドレスアップラウンジ・学生服係/アシスタントマネージャー。松屋銀座の婦人服売場を経て、現在は紳士雑貨売場の中で紳士靴をメインに担当する。明るく場を和ませるタイプで、多趣味。
良質な紳士服や靴、鞄、雑貨などが豊富に揃う松屋銀座の5階。その紳士靴売場で働く高田将行さんは、「シューフィッター」という資格を持ち、靴選びのプロとしてお客様の接客に日々あたっています。高田さんの靴選びの知識やプロとしての顔、そして素顔に迫りました。
「足は第二の心臓」。足に合った靴を正しいサイズで長く履いていただくために
――高田さんは、「シューフィッター」という資格を持っているそうですね。どんな資格なのでしょうか。
高田:シューフィッターは、足の健康や構造などに関する基礎知識とフィッティングの技術をもって、お客様に合う靴を提案する専門家のことです。足は第二の心臓と言われるくらい、その方の健康に大きく影響する部分。その足に合わせる靴は、ファッションとしての面以外に、健康という面でもとても重要なアイテムなので、正しくフィットした靴を選ぶことが大切です。
――資格を取得することにしたきっかけはなんだったのでしょうか?
高田:紳士靴売場を長く担当していたので、シューフィッターの資格があると接客においても説得力が増すのではないかと感じていました。それに、私自身も昔から靴が好きだったこともあり、この資格はずっと取得したいと思っていたんです。資格試験の時には、50人分の足の計測をしなくてはいけないので、職場のみなさんにお願いして測らせていただきました(笑)。
――それは大変でしたね。資格を取ったことで、接客する上での変化はありましたか?
高田:足に関する知識が増えたことで、正しいサイズ選びができていない方がとても多いことに気づけるようになりました。接客の中で正しいサイズ感をお伝えし、ご納得・ご満足のうえで感謝していただけた時には、とてもやりがいを感じます。プライベートでも、家族や友人が靴を買う時にはアドバイスをしますし、もちろん自分自身の靴選びで失敗することはなくなりました。
――正しいサイズ選びができてない方が多いということですが、何に気をつけて靴を選ぶといいのでしょうか。
高田:一般的に見ると、革靴を履かれている方の多くは、ご自身の実際のサイズよりも大きな靴を履いていらっしゃることが多いです。きつい靴よりも、ゆったりしている靴のほうが楽だと考える方が多いのだと思いますが、大きいサイズの靴を履くと、靴の中で足が動いてしまって余計に疲れたり、靴ズレなどの足に悪い影響が出たりします。ですから、正しいサイズの靴を履くことをおすすめしています。
――特に革靴の場合は、サイズをしっかりと計測していただいたほうがいいんですね。
高田:実は、一般のスポーツメーカーのスニーカーのサイズ表記が靴の全長であるのに対して、革靴の表記サイズは足の全長のサイズになっているため、スニーカーに比べて革靴のサイズは1~1.5㎝程下がる傾向にあります。ご自身の靴のサイズをスニーカーのサイズで認識されている方が多いことも、大きめの革靴を履いていらっしゃる方が多い原因の一つなんだと思います。
休日も研究するほどのファッション好き。それが接客に役立つことも
――そもそも、高田さんはなぜ今の仕事を選ばれたのでしょうか。
高田:学生の頃からファッションをはじめとした「モノ」全般が好きなので、あらゆるモノを扱っている百貨店で働きたいと考えていました。その中でも、自分で実際に商品を身に着けてみて、その良さをお客様に伝えていける売場がいいという想いが強かったので、紳士服売場を希望しました。入社してすぐは婦人服売場に配属になったのですが、3年目から紳士雑貨売場に配属になったんです。
――紳士雑貨売場で働くようになって、ご自身の中で変わったことはありましたか?
高田:スーツやジャケットを着る機会が多くなったことから、メンズドレスファッションが好きになりました。休日でも、以前はゆったりした大きめの服を着ることが多かったのですが、最近はトラッドなシャツやパンツに革靴を合わせることが増えました。飽きのこない長く使えるアイテムを選ぶようになってきましたね。
――休日には、ファッションの研究もされているそうですね。
高田:もともとファッションが好きなので、雑誌やInstagramをよくチェックしています。ファッション関係の仕事をされている方の服装などをこまめに見て、いいなと思ったアイデアを取り入れることもあります。
また、今は生産されていない昔の洋服を探して、古着屋をはしごして回ることも。そうやって集めた知識やトレンド情報などは、接客の際にお客様にお伝えすることができるので、仕事の上でも役立っています。
――ファッションの研究以外には、休日はどんなふうに過ごされているんですか?
高田:喫茶店で本を読んだり、サウナに行ったりしています。あとは、ワインやウイスキーなどのお酒を楽しむことが多いですね。外食が多いので、美味しいお店を調べて実際に食べに行くことも好きなんです。コーヒーにもこだわっていて、毎朝豆を挽いてドリップして飲んでいるので、美味しいコーヒーを飲んですっきり目覚められたら最高の休日ですね。
「この人がいるから買いたい」。松屋銀座のファンを増やすことを目指して
――普段は売場の運営から催事の企画・運営、後輩の指導・育成など、幅広い業務にあたられているそうですね。特にやりがいを感じる業務はなんでしょうか?
高田:私は今、アシスタントマネージャーという立場で紳士靴を中心に、紳士雑貨とスーツの売場全体を見ています。その中で、接客したお客様が喜んだり顔を覚えてくださったり、私から買いたいともう一度来店してくださったりすることが、一番嬉しいことですね。
最近だと、細部までこだわりを持って靴づくりをしている取引先と共同企画で靴を作り、6月から松屋銀座で販売をスタートしまして。ものづくりに携わる機会は初めてだったので、とてもやりがいを感じました。
――どういった商品を企画されたのでしょうか?
高田:海外のブランドで、今は廃盤となってしまった好きな靴がありまして。自分でも一足所有しているのですが、その雰囲気で靴が作れないかと靴づくりをしている取引先に掛け合ったところ、フレキシブルに対応していただけることになったんです。
その結果、自分の好きな靴の形に少しアレンジを加えた形で、商品化が実現しました。クラシカルな雰囲気を感じられると思うので、ぜひ店頭で見ていただけたらと思います。
――接客する中で、プロとして意識していることを教えてください。
高田:「お客様に寄り添う接客」を意識しています。お客様のニーズに対して、売場の中でベストな商品を常にご提案できるように準備して、あらゆる場面でお客様が求めるレベル以上の対応ができるようにしています。また、商品について話すだけでなく、お客様の身につけているアイテムについて会話をするなど、記憶に残る接客をすることも心がけているんです。それと、お客様がお求めの商品が松屋銀座にはないと判断した時には、他店をおすすめすることもあります。
――他店をすすめることもあるんですか?
高田:はい。近隣の店舗のブランドや取扱い商品はおおむね把握しているので、お客様が「こんな靴が欲しい」と探されているものが松屋銀座にない場合や、サイズの在庫がなく、お急ぎの場合は他店舗をご案内することもあります。目先の売上という面では松屋銀座にとってマイナスかもしれませんが、お客様の立場に立って接客することで、「今度は松屋銀座で買ってみよう」という気持ちを持っていただけたらいいなと。そうやって、お客様にもっと松屋銀座の深いファンになっていただきたい思いがあるんです。
そのためにも、松屋銀座のクルーのファンになっていただく必要があると思っています。「この人がいるから松屋銀座で買おう」と思っていただけるよう、人一倍意識して接客をしています。ブランドやジャンルを横断して商品をご案内できるのが百貨店の良さなので、靴を買っていただいたら、ご希望に合わせてそれに合うベルトやスーツをご案内するようなトータルでのご提案をもっと強化していきたいですね。
――最後に、お客様へのメッセージをお願いします。
高田:売場にいらっしゃった際は、ぜひ私にお声がけいただけたら嬉しいです。どんなことでもご相談ください。また、紳士靴売場以外にも、松屋銀座にはワクワクする素敵な売場と確かな目を持つクルーが多くいます。「松屋」という百貨店を好きになってくださったらこの上ない喜びです。