【特別インタビュー】 高山都さんの「もてなし術」 気どりすぎず、ゲストも自分も楽しい場づくりを
ようやく街や店に活気が戻り、人が集う機会も増えてきたような印象ですが、高山さんご自身はいかがですか。
様子を見ながらではありますが、昨年から少しずつ、誘ったり、誘われたりする機会が増えました。人に会うって、いい意味で緊張感を伴いますよね。身なりをととのえたり、メイクをしたり。こういうシャンとする感覚って気持ちいいなと思うんです。
人を自宅に招くとなったら、なおさら。すっかり家族仕様になっていた部屋を片づけたり、隅々までそうじをしたり、もてなしの席を設けることで、リフレッシュできることがたくさん。これを機に、出しっぱなしになっていた小物の収納用に、かごを新調するとかも気分が上がっていいですよね。
なるほど、もてなすことで、自分もリフレッシュできる!
気分の切り替えにおもてなしは効果てきめんだと思います。しばらく籠ってばかりの生活だったから人の招き方を忘れてしまった……というかたもいらっしゃると思うのですが、お店ではないんだし、気負いすぎなくて大丈夫。ただ、せっかくわが家に来てくれるのだから、その時間を心おきなく楽しんでもらえる用意はしておきたいなと思います。
具体的にどういった用意を?
みなさんがいらっしゃる前に植物を飾ります。たとえば秋なら、長持ちで、見た目もかわいいキク科の花や、インテリアのアクセントになる実ものなど。またテーブルまわりには、食事の匂いと混ざっても違和感のないハーブをしつらえたりも。特に気に入っているのはバジル。バジルってすごく多幸感のある匂いなんですよ。飾ったあとは食事に使ったり、お茶にしたりと無駄なく使えるし、簡単に包んでゲストの方に持って帰っていただいたりも。私は浜松のバジル農家さんからとり寄せているのですが、庭やベランダで育てているハーブをささっと飾るのも、気どりがなくて素敵だなと思います。
もちろん飾り方もわが家流で。ホームパーティーって、日常の風景の延長線上にあるものだから、花瓶が足りなければ、コップや鉢などを使ってもいいのではないでしょうか。女優であり、エッセイストでもあった高峰秀子さんの著書で「ピッチャーを花器に使っている」という記述を読んで以来、私もピッチャーを花器としてよく使うようになりました。ピッチャーって、日常ではあまり出番がないけど、“兼用できる”となると買うときのハードルがぐっと低くなる。そんなところも多用途使いの魅力かな、と思います。

それに、じつはピッチャーこそ、おもてなしに欠かせないアイテムではないかと思うんです。ペットボトルってとても便利なだけに、生活臭を感じさせるアイテムでもあるんですよね。せっかく素敵な器に料理を盛って、きれいにテーブルをセッティングしても、ペットボトルがあると間に合せのような食卓になってしまう。いっぽうピッチャーは、特別感のあるアイテム。しかも、何でもない飲み物をおいしく感じさせてしまう効果まである。これは使わない手はありません。
酔い覚ましの水を入れておいたり、ウェルカムドリンクの容器として使ったり。暑い時期なら、見た目も涼しい中村智美さん作のステンレスのピッチャーにキリッと冷やした「すすむ屋茶店」の水出し煎茶を用意しておくといいかもしれません。

宴の席では、どんなグラスやコップを使っていますか。
女性ばかりの集まりなら、うすはりグラスや華奢なワイングラス。お酒大好き!の呑兵衛さんの集まりには安定感のあるものを選んだり、あるいは飲みすぎないように、あえて小さめのものを選んだり……といった具合に、ゲストや料理によって、セッティングするものを変えています。扱うのに緊張させてしまうのは申し訳ないですから。
それに、全部おそろいでなくても、手仕事のものなら、素敵なコーディネートになりそうですよね。形も個性も違うひとつひとつが“手仕事”によって有機的につながり、不思議と統一感も生まれる。それが手仕事のおもしろいところだと思います。
あるいは、いくつかコップを用意しておき、それぞれに好きなものを選んでいただくのはどうでしょう。小料理屋さんでお猪口を選ばせてもらうの楽しいですよね。それを自宅でも。場もなごみ、わいわい楽しめるのではないでしょうか。

器選びは食事に合わせて?
それもあるし、使いたい器に合わせてごはんをつくることもあります。“全体的に白っぽいテーブルコーディネートにしたいな”とか、“あたたかみのあるコーディネートにしたいな”とか。民藝の器を主役にしたい日もあるし、フランスのアンティークでまとめたいときもある。大好きな器をいくつも使えるのが、ホームパーティーの醍醐味でもありますよね。
あとはグラス選びと同じで、ゲストに合わせてセレクトしたりも。おしゃれに敏感な女性の集まりなら、アンティークのお皿を銘々にセッティングしたり、男性のゲストには、遠慮なくいっぱい食べてほしいから、民藝の大皿でどーんとお出ししたり。お子さんがいる場合は、食事中に親御さんがハラハラしなくてすむよう、割れにくい厚めの器や木の器を用意します。お子さんにも「これ、◯◯ちゃんのだよ」と声をかけると、すごく喜んでくれて。

楽しいひとときを通して、その人の“好き”が増えていくと、素敵ですね。
そうなると本当にうれしいです。私自身、お呼ばれしたときは、料理のレシピを尋ねたり、使われている器のことを聞いたりして、自分の好きの世界が広がっていく感じがあって。そもそもホームパーティーって、すごく平和な時間だと思うんです。目の前に素敵な器があって、そこに料理がきれいに盛られていて。そういう場にいると、自然と話もポジティブに展開していくことが多い。器には、そんな楽しい時間をつくる力があると思います。
高山さん流のテーブルコーディネートを教えてください。
もてなしの席で私が意識しているのは、以下の5つ。これだけで、いつもの食卓が華やいで見えますよ。
①高低差を出す
脚付きグラスやケーキスタンドを使って、ほんの少し高さを出すとテーブルに凹凸感が出て、にぎやかな印象に。フランクな飲み会なら「陶房眞喜屋」の陶器のワインカップにカトラリーを入れ、各自が自由に使えるようにしておくのもよさそうです。

②大皿や大鉢で余白をつくる
大きな器に料理を盛ると周囲に余白ができますよね。このわずかな間が、ほかの器との調和をとり、互いを引き立ててくれます。ちなみに大皿や大鉢は、ふだんあまり見かけないアイテムなので、ピンとくるものに出会ったら買っておくのがおすすめ。置き場に困るようなら比較的収納しやすいオーバル形はいかがでしょうか。丸い大皿ならディッシュスタンドに立てかけて、インテリアにとりこむのもいいですね。今回、私が気になったのは瑠璃釉の深みのある青色が美しい三宅康太さんの鉢や、

ベトナムの器のような趣のある「陶房遊」の平鉢。

メイン料理やサラダなどをダイナミックに盛りたいです。対して、盛りつけを楽しみたいときは「汲古」の大皿が活躍しそう。料理や食材をおおらかに受けとめてくれる、やわらかな風合いが素敵です。

③木製品や布をプラスする
カッティングボードやコースター、ランチョンマットなどは、本来の役割としてはもちろん、陶磁器やガラスなど、硬質な素材をやわらげる視覚的な効果も。持ち手にデザイン性のある莊司 晶さんのボードは、カッティングボードだけにとどまらない魅力がありますよね。ハンドル部分のデザインはもちやすさと遊び心をもって、つくられているそうで、和食器とも相性がよさそうです。

④小さな器やカトラリーをワンプレートにまとめる
前菜やソースなどが複数ある場合は、ワンプレートにまとめると、一気におしゃれ感が。カトラリーや酒器などを鉢の変わりに使ってもいいかもしれません。ポップな色合わせがかわいいガラスのスプーンは池谷三奈美さん作。和・洋どちらの風合いも合わせもつ貫入の酒器は大園篤志さん作。ともに違う個性をひとつにまとめているのがオノエコウタさん作の器。不思議とどんなものにも合う、ふところの深さがあります。

⑤なじませ役を加える
さまざまなテイストの器が並ぶテーブルコーディネートでは、それらを調和してくれるノーマルな器を加えるようにしています。洋服でいうと白Tシャツのような。とはいえ、手仕事の器の中に工業デザインのプレートが入ってしまうと、かえって浮いてしまうので、シンプルでありながら、あたたかな質感は必須。この岩佐昌昭さんのリムプレートは、そんな望みどおりの頼もしい器。

縁が立っているので料理が盛りやすく、5寸、7寸、9寸と、いろいろな料理に使えるサイズ展開も魅力。日常では、朝ごはんプレートとしても重宝しそうです。
いずれも簡単にとり入れられそうなアイディアですね。
そうなんです。“おもてなし”と“日常”を切り離すのではなく、ホームパーティーだからこそ、いつもの暮らしの中にある器や道具を生かしながらの心遣いでいいのではないでしょうか。
服装についても、“ホスト”ということを念頭に、動きやすい服を選ぶようにしています。清潔感がありつつ、腕をまくり上げれば料理の邪魔にもならないシャツが1着あるといいかもしれません。たとえ汚れてしまっても、シミとりができるような綿や麻などのタフな素材のものを選べば、なおよしですね。ただ服がベーシックすぎると華やかさに欠けるので、アクセサリーで特別感を添えるのを忘れずに。たとえば「eri,」のネックレスは、目をひきつけるインパクトがありつつ、身につけるととても軽いところが、すごくいい。

また、今日はデニムで!という気分であれば、カジュアルな服装にもよく合う「神保真珠商店」のびわ湖真珠のピアスをプラスしてみては。顔まわりだけでなく、気持ちもトーンアップしてくれそうです。

いずれも“自分らしさ”がポイント!
まさしく。みんなと楽しい時間を過ごす、そのために自分ができるエンタメな何なんだろうと思いながら、あれやこれやと用意しています。その時間自体も楽しいんですよね。「銀座・手仕事直売所」には、そんな楽しい時間を生み出してくれる品々が集まっているので、ぜひ足を運んでみてください。それを使うことが、自分の喜びにもなる。そんなものとの出会いがありますように!
◆記事で紹介している一部商品は、松屋オンラインストアでも販売中。
8月30日(水)午前11時−9月17日(日)午後5時
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