「レストラン・クオリティを届けたい」料理のプロと松屋が共にする想い

時代をよんだバイヤーと

古からの慣習に新風をもたらしたシェフ

松屋でお取り寄せができる『ポンドール・イノ』の料理は、ハムやローストビーフ、そしておせち。レストランでいただくのはもちろん格別ですが、ご自宅へお届けする料理も同じように厨房で手がけられているもの。ただし、その陰には同じ美味しさを実現するための技術や工夫が……。そんなシェフのこだわりや、シェフの想いをお客様につなげる松屋の、当時バイヤー、現在は部長となった柏木さんが料理について語ります。

柏木さん

「柚原さんとのお付き合いも、もう10年以上になりますね。松屋では“レストランの厨房で手がけられた本格的な味を、ご自宅でも”という考えが当時からあり、日本のフランス料理界の重鎮、井上シェフのお店『シェ・イノ』に、系列店である『ドゥ・ロアンヌ』(2013年に閉店)を紹介していただき、私が一方的にお電話を。“おせちを作っていただきたい！”と、緊張しながらアポイントを取ったのを覚えています」

柚原さん

「本当にそんな感じで、急にお電話をいただきましたね(笑)。僕も覚えていますよ。実は、その少し前からおせちは作っていたんです。ただ、多くの人に届けるものではなく、ご贔屓にしていただいているお客様へのお礼を兼ねて10〜20台だけ、こじんまりと作っていました」

柏木さん

「おせちはもともと家庭で手作りするものでしたが、百貨店でお求めになるお客様が増えてきたこともあり、松屋では“おせちの次のステージ”について考えていました。大切な1年の始まりを自分の好きなもの、贔屓にしているお店のものと一緒に過ごしたいというお客様のお声も実際にありましたね。そこで、その頃の常識を取っ払った“洋のおせち”にチャレンジしてみようということになったのです」

柚原さん

「日本のおせちは歴史が長く、目的も確立していますよね。お正月の三が日を共に過ごす日持ちのする料理を詰め込んだもの。ですから、そこへフランス料理が参入すること、そして僕たちのお店を知らない新しいお客様にお届けすることがうまくいくのかどうか……、悩みましたね。メニューでは、お店での料理とは違う“冷たい状態で美味しくなくてはいけない”ことが課題でした」

柏木さん

「そうですよね。冷たくても美味しい料理って、やはりお店で提供される料理とは考え方が違いますか？」

柚原さん

「冷たくて美味しいフランス料理はパテに代表されるようなものがありますが、たとえばローストビーフは温かいもの、冷たいもの、どちらもありますよね。焼きたてのローストビーフをその場でカットして提供する場合はサシが入ったお肉がいいのでしょうが、冷たい状態で食べていただく場合に同じお肉を使うとサシが白く固まってしまい美味しくないんですよ。こんなふうに、お届けする料理も素材から新しく考える必要があります」

柏木さん

「サシがしっかり入ったお肉はどう調理しても美味しいわけではないんですね。では、調理の仕方……、たとえば火の入れ方なども変わるのでしょうか？」

柚原さん

「そうですね。サシの少ない赤身のお肉は、低温でゆっくりと火入れしないとパサパサになってしまいます。柔らかさと歯ごたえ、そしてジューシーさなどをバランスよく仕上げるための火加減や温度管理には試行錯誤しましたよ」

柏木さん

「柚原さんに手掛けていただいているおせちも、お客様からとくにお肉の評判がいいんですよ。また、松屋で展開するメニューでは、『シェフ特製 岩中豚のハム』も人気です。この岩手県産の銘柄豚に柚原さんが惚れ込んで実現した料理ですよね」

柚原さん

「そうなんですよ。このお肉は歯切れがよく、脂のキレがいい。脂の融点が低いため、口の中で溶けるような心地よさがあります。ハムはもともと冷たくて美味しい料理なので、僕はとにかくまっとうに、丁寧に作ることだけ。実は、今シーズンから調理法をブラッシュアップさせる予定です」

柏木さん

「そうなんですね！ どんなふうに味わいが変わるんですか？」

柚原さん

「今まではお肉をじっくり燻製し、藁を入れた調味液に漬けて火入れをして香りのアクセントにしていましたが、今回は燻製よりも調味液に漬けるマリネの方に重点を置いています。この製法だと薫香が少しライトになり、お肉の発色はより美しくなるんです。化学調味料や発色剤を使わない料理はどうしても変色が起こりやすいから、その点をよりよくできないかな、と常々考えていたんですよ」

柏木さん

「自然の食材は変色があって当然ですが、できる限り“目で味わう”点でも長くお客様に楽しんでいただくような工夫をされているんですね」

柚原さん

「味や香り、歯触りや舌触り、見た目の美しさ……、美味しさにはいろいろな要素がありますからね。新生『シェフ特製 岩中豚のハム』も楽しみにしていてください」

どんな人にもよろこびをもたらす美味の世界。

その根底に流れる、しあわせの連鎖

柏木さん

「すでにフレンチ界で有名な柚原さんですが、何がきっかけでフランス料理の世界を選ばれたんですか？」

柚原さん

「僕が専門学校生のとき、井上シェフが特別講師として登壇されて。さまざまなレストランのシェフが講師をされていたのですが、井上シェフだけができ上がった料理の味見をさせてくれたのです。そのソースを食べたとき、衝撃を受けたんですよ。“ソースの井上”という言葉は、まったくその通り。驚きと感動のあまり、授業が終わったその足で“働かせてください！”と直談判しました(笑)」

柏木さん

「井上シェフとは“先生と生徒”という出会いだったんですね。そんなに感動した味を学べるなんて、すごく楽しかったんじゃないですか？」

柚原さん

「現場はなかなか大変でしたよ(笑)。授業が終わってレストランへ直行すると、毎日山のように積まれた洗いもの。僕が到着するのは夕方なのに、ランチ営業が終わっていないんですよ。大人気のお店だったので、毎日ランチには100人以上のお客様がいらっしゃっていて。泊まり込みで働く日も少なくなく、卒業式の日でさえも終わってから働いていましたから。でも、授業で体験したあの味、あの技術……、どうやって作っているのか純粋に知りたくて。働くことの大変さよりも知りたい欲求の方が上回っていたんだと思います」

柏木さん

「以前、そういう人気店で働く人を取材したTV番組を観たことがありますが、その方は厨房で寝ていました……。本当にそんなに忙しい世界があるんですね。でも、そんな柚原さんだからこそ素晴らしい料理を生み出せるのだと思います」

柚原さん

「料理は食材、素材の力が1番すごいんですよ。料理人はそこに少し手を加えているだけ。生のお肉をハムにすることでその食材がより美味しく食べられるとしたら、それはやってよかったという答え。ハムでは岩中豚にこだわってずっと使っていますが、それはこのお肉のよさを少しでも伝えられたらいいな、と思っているからです」

柏木さん

「素材は目利きが重要で、その部分も含めて柚原さんのようなシェフが美味しいものを作り上げてくださる。私もいち消費者として、とてもありがたいですね。そして、松屋の人間としては、同じように本物の味を求めているお客様とこういった素晴らしい料理をしっかりとつなげたい。そして、松屋での出合いを入り口に料理や作り手に興味を持っていただき、お客様にはいつかレストランへ足を運んでいただきたい。そこまでが我々の仕事だと思っています」

柚原さん

「手がけた料理のことが、ちょっとでもお客様の記憶に残ってもらえるとうれしいですよね。松屋さんでレストランの名前を出せるのは、当たり前ですが宣伝にもなるのでとてもありがたいこと。それに柏木さんはじめバイヤーの方々はみなさん“松屋で売れる商品をバンバン作ってください！”ではなく、“お客様の興味をお店へ向けたい”と言ってくださりますよね。一緒にお仕事をしている、その一体感がありがたいです。これは出会った当初から変わりませんよね」

柏木さん

「お客様には誠心誠意でいいものを、シェフのようなお店を持つ方にはお客様を。そうやって還元できることを考えないでは、いい関係性は続かないと思うんです。しかも、今は多くの業界が苦境に立たされている時代。こういった関係性がより意味を持ち、人と人とのつながり＝縁があってこそ最終的に乗り越えられるものじゃないでしょうか」

「本当に美味しいものをいただきたい」というお客様の願いを叶えるため、さまざまなお店と松屋は、それぞれの想いを共有しながら前進しています。「松屋で見つけたあのハム」がもしもお気に召しましたら、ぜひ『ポンドール・イノ』の扉を開けてください。

2021松屋のお中元

日本橋 ポンドール・イノ　シェフ特製 岩中豚のハム　5,400円（送料込）

松屋オンラインストア（7月10日（土）午後8時まで）、もしくは8階お中元ギフトセンター（7月19日（月）午後5時まで）にてご注文いただけます。

⇒オンラインストアはこちら

※店頭での販売はございません。

※お届けはご注文後2週間から3週間頂戴いたします。(ご注文をいただいてからレストラン厨房にて手づくりしておりますのでご了承くださいませ)

※6月中旬から7月下旬までのお届けとなります／本州・四国のみ(一部地域を除く)