目に見える“もの”と、見えない“気持ち”。どちらもきれいに包んでお届けしたい

贈りものは、特別なもの。贈る側も、いただく側も、きっとその感覚は同じでしょう。では、主役となる“もの”を扱う百貨店の温度感は？

今回お話したいのは、数え切れないお客様と、先様と、贈りものとをつなぐ“包装”のこと。日本独自の文化でもある、当たり前のようで奥深い世界で活躍するスタッフに焦点を当てました。

カスタマーステーション担当　羽毛田さん（左）鳥居さん（右）

包装は、百貨店では当たり前のサービス。

でも本当は、ひとつひとつが緊張の連続

中身の印象さえ左右してしまうほど、大きな力をもっている包装。「(人を、ものを)外見で判断してはいけない」なんて言葉もありますが、外見から内側を想像するのはきっと無意識で、当たり前のこと。そこに“贈りもの”という特別感が加わるならなおさらです。

包装は、日本人がもつ気質と人情、そしてセンスにより育まれた独特の文化。単純に“運びやすくする”“まもる”といった実用性に加えて、そこには“相手に気持ちを伝える”という意味合いが大きく含まれているのです。

百貨店では毎日、あちこちで“包む”という瞬間が、それこそ当たり前のように繰り広げられています。つい見入ってしまうような手さばきと、完璧に仕上がった贈りもの。そんな“包む”ことに、真摯に向き合うスタッフが銀座にいました。

鳥居さん

「私たちは、さまざまな形・大きさ・重さの箱と、4サイズの包装紙とを組み合わせて包みます。包みやすいものもあればそうでないものもあり、簡単そうに見えて実は、頭のなかでピピピッとすばやい計算が必要なこと。最後にテープでとめる際、織り込んだ包装紙の三角形が美しくなるか、ラインは一直線か……そんなことを思い描き、広げられた包装紙のどこに最初に箱を置くかを考えます」

羽毛田さん

「紙のサイズは限られているので、結構頭を使いますよね。紙が余りすぎるともたついてしまうし、もちろん足りなければ問題外です。私はまだ技術が追いついていないので、苦手な箱が結構多くて(笑)。たとえば、立方体の箱は包むのが難しくて緊張します」

鳥居さん

「お客様がギフトを先様にお渡しするまで、完璧な姿を保つよう包装するのが私たちの使命です。ですから、包装紙の隙間が引っかかって破れてしまう、なんていうアクシデントも想定し、そうならないような包み方を考えます」

羽毛田さん

「包装紙がひらひらと浮かないよう二重にして強度を増しておくなど、もし引っかかったとしても破れにくい工夫をしていますよね。ギフトに関わる箱の選び方やものの詰め方をはじめ、どうしたらベストを尽くせるのか、毎日答えを探しながらギフトと向き合っています」

想うからこそ、美しく届けたい。

その先の笑顔としあわせを想像して

美しさを追求しつつ、その状態を保つよう緻密に考えられた“包む”ということ。贈りものが先様に届くところまで考えられたこのアクションは、包装を通した百貨店とお客様とのコミュニケーションともいえるでしょう。

鳥居さん

「お客様や先様に対する想いは、きっとスタッフ全員が同じでしょう。でも、包装の技術的な面では全員が同じではありません。松屋ではいま、この点に注目しています。できる限りお客様に同じサービスが提供できるような仕組みを考えているのです。

ちょうどそんな話が出たタイミングで、私は教える立場として必要性を感じていた“ビジネスラッピング”の資格を取得しました。自分の技術もまだまだ向上させたいのですが、全体のレベルの底上げをしなくては、と思っていました」

羽毛田さん

「また、同時に“お客様が思い描く包装”というのも考えなくてはいけませんよね。ギフト包装がきれいになされることはお客様にとって特別なことではなく、さらに上をいく“こんな最終形”を想像・期待されているもの。ここを私はもっと学ばなくてはと感じています」

鳥居さん

「私たちはカウンターの内側にいて、箱に商品を詰めるところからお客様とコミュニケーションをはじめます。売場でどんなやりとりをされたか把握しきれないまま包装に取り掛かることも多いので、その点にも気を配る必要があります。」

羽毛田さん

「あとは、スピード感。ショッピング中とお会計時では時間の感覚が違うものです。スピーディーに判断をして包み終えなくてはなりません」

鳥居さん

「贈りものが先様の手に届いた時点で“素敵”だと思っていただけることが、なによりも大切なこと。開封してさらなる素敵が続くといいな、という気持ちで毎日努めています」

“手に入れるだけ”の買い物とは違う、日本の百貨店ならではの文化的なおもてなし。

想いとともに包装のクオリティーの足並みをそろえることで、松屋はよりお客様とのつながりを深めたいと考えています。