商品力を超える人間力。松屋銀座らしさの要は「コンシェルジュ精神」vol.3

スマホで、パソコンで、ネットの世界で簡単に「もの」が手に入るこの時代。

さらに、2020年は未曾有のコロナ禍という事態もあり、百貨店はそのありかたについてより深く考えることになりました。

現場のスタッフはこの状況下、数あるなかから松屋銀座に足を運んでくださるお客様とどのように向き合っているのか。そこから見える、共通のコンシェルジュ精神とは。

スタッフ陣が抱く想いや実践していること、忘れられないエピソードについてお話を伺う不定期連載です。

経験と想いを重ねてこそ生まれる

本物のコミュニケーション

生鮮・グロッサリー担当　木嶋さん

会話以外の場所にあるお客様の本音

それをつかむための、私の五感

生鮮食品などを扱う地下2Fにて、お客様の応対にあたる木嶋さん。日常から贈答まで、お客様のさまざまなシーンに「食」という商品を介した提案をおこなっています。

「とある日にいらっしゃったご夫婦とのエピソードです。“快気内祝を”と伺いましたのでご状況に合う商品を提案し、掛紙もそのように準備していました。しかし、お会計までをご一緒し、どうも私には快気されているように感じられません。お客様のリクエスト通りに進めていましたが胸騒ぎが止まりませんでしたので“ありがとうございました”の後、再度お声がけをしました。

ただ今、快気内祝として承りましたが、御見舞御礼という掛紙もございますよ、と。

すると、やはり快気はまだされていないとのこと。ご病気が長くなられたので、とりあえずのお返しを、といらっしゃったのでした。ご夫婦は私の提案に耳を傾けてくださり、ご納得のうえで“じゃあ、そっちの方がいいわ”と、掛紙を御見舞御礼に変更されました。

私が常々思っていることは、お話を聞くだけでなくお客様自身を、雰囲気を、しっかり見ていないと本当のおもてなしはできない、ということ。

応対のなかには言葉のやりとりでつかめないことが意外と多くあり、それらは会話以外の部分に目を向ければ解消することが多いからです。

また、想像することも大切。

お客様のお話や印象などから、キッチンはこんなふうじゃないかな、こんな生活をされているんじゃないかな、と。あらゆる感覚を総動員して、大げさに言えばその方の生き方を想像するのです。すると、お客様のご要望がもっとクリアに感じられる。私はそう考えています」

商品と想いとで完成するギフト

お客様の想いを100％詰め込むために

木嶋さんは、今は海外に住まわれているお客様とも電話等で交流されています。そんな方々からは、日本のご友人に贈りものを、というご相談が多いようです。

「お仕事の関係上、1年のほとんどをパリで過ごされているお客様とのお話です。日本を離れた後も松屋銀座を頼っていただいていて、ことあるごとにお電話をくださります。先日は日本にお住まいのご友人にご不幸があったそうで、なにか贈りたい、というご連絡でした。

お客様が目の前にいらっしゃる場合とそうでない場合とでは、やはり後者の方がよりおもてなしの感度を高める必要があります。遠くにいながらもご友人を大切に想う、お客様のお気持ちをしっかりと伝えなくてはならないからです。

そのために、私は必ずギフトを贈る側と贈られる側、両方の立場に立って考えてみます。

つまり、お客様のさまざまなお立場をふまえたうえで“もし自分だったら”を添えて考え直してみるのです。

ですから、先様の年齢や好みなどはもちろんですが、お姿を拝見できないお客様自身の最近のご様子なども伺って提案したい商品について考えます。

箱を開けたその瞬間、もっとも濃厚に届くギフトに込められた想い。

ふたを閉じ、包装を終える瞬間まで、お客様と先様のよろこぶお姿を想像してギフトに反映していくことが私たちの使命です」