商品力を超える人間力。松屋銀座らしさの要は「コンシェルジュ精神」vol.1

スマホで、パソコンで、ネットの世界で簡単に「もの」が手に入るこの時代。

さらに、2020年は未曾有のコロナ禍という事態もあり、百貨店はそのありかたについてより深く考えることになりました。

現場のスタッフはこの状況下、数あるなかから松屋銀座に足を運んでくださるお客様とどのように向き合っているのか。そこから見える、共通のコンシェルジュ精神とは。

スタッフ陣が抱く想いや実践していること、忘れられないエピソードについてお話を伺う不定期連載です。

時代のスピード感、多様性をつかみ続け

想定外のニーズも自分のものに

デザインコレクション担当　石塚さん

お客様の価値観は百人百色

だから私は、百一色めをご用意したい

冠婚葬祭や節目ごとのギフトを選ぶ場として、松屋銀座を訪れるお客様は毎日のようにいらっしゃいます。そんななかでの、石塚さんにとって印象的な出来事でした。

「結婚式の引き出ものをお探しでした。『銀座・手仕事直売所』という松屋銀座の名物となる催事で器をお選びになり、ラッピングのため7階にお持ちいただいたところでおあずかりを。おめでとうございます、とごあいさつをした後、ラッピングはどういたしましょうか、と伺いました。熨斗になさいますか、それともリボンにいたしましょうか。思い返せばこのとき、引き出ものですしきっと熨斗だろうと、自分のなかの当たり前や慣例でお客様の答えを想像していたのかもしれません。

でも、お客様のお答えは、とられたアクションは、まったく違ったものでした。少し待ってください、とおっしゃると、おもむろにコインをお出しになりポンッと宙に放り投げて手の甲でキャッチ。コインは裏でした。

リボンにしてください。

お客様はさらりとおっしゃいましたが、私は一瞬、とても驚いてしまった、というのが記憶に新しい経験です。

ご案内をする者として、引き出もの＝熨斗が当然、シーンがカジュアルならリボン、という考え方だけでいるわけにはいかない、と強く感じました。商品の選び方、贈り方、それらの基準は慣例や状況だけでないのですね。私たちが思っている以上に、お客様の価値観は多様で、それならば提案ももっと多様にしていかなくては、と。

これまでの決められた形や考え方ではない、お客様の今のニーズに合うかたちでギフトを選んだり、贈ったりする方法を考えていこうと感じた出来事でした」

商品と想いとで完成するギフト

お客様の想いを100％詰め込むために

世界中の優れた商品が集まる7階デザインコレクションには、年齢の若いお客様も比較的多く訪れます。

「そういったお客様はお目当ての商品をひと通りお調べになり、たとえば“今日は友人の結婚祝いとしてあの無水鍋を買う”など、心に決めていらっしゃることも多いのです。私が応対しましたお客様は、決めていらっしゃった24cmの無水鍋を実際に手にとられると、意外と大きいんですね・・・とひと言。迷っていらっしゃったので、少しずつ質問をしながらお話をしました。そのお答えから、私はひとつ小さいサイズをおすすめすると、そうですよね、と笑顔で納得され、そのひとつ小さいサイズの無水鍋をギフトに選ばれました。

オンラインで気軽にショッピングができる今、百貨店に足を運び、実際に手にとって選びたいという方のなかには、「相談したい」という想いを抱いておられる方が多くいらっしゃるのだと思っています。

それがギフトのためなら、贈る相手の方を想ってのこと。

その先にいらっしゃる方の満足が、目の前のお客様の幸せ。

ですから、ギフトには少しの迷いも入り込まないようにしたいのです。お客様とご一緒する時間はほんの少しかもしれませんが、そんなことを念頭におきつつ対話を大切にしています」