松セン5・パン娘のフランス旅!
−松屋銀座 開店100周年記念−
シャンパン造りに密着 vol.3
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チーム松屋銀座の真摯な想い
前回までに、パン娘をはじめとする一行は畑でぶどう樹について学び、プレスルームやワイナリーで収穫後のぶどうがどのようにシャンパンへ変わっていくのかを見学しました。そしてこの日、出張のメインイベントとなる松屋銀座 開店100周年の限定シャンパンの味を決める時が、ついに訪れました。

一行が関わるのは、シャンパンの味の決め手となるドサージュ(加糖)。これは、デゴルジュマン(澱抜き)という瓶底に溜まった澱を抜く工程で失われた液体と糖分をワインで補充する、シャンパン造りの最後のステップです。ここでブレンドするワインの香りや味わい、そして全体の糖度の選定により、シャンパンの味が決まると言っても過言ではありません。
今回のベースワインは、2018年に収穫、2019年にボトリングされたもの。丸みや柔らかさのなかにミネラルをしっかり感じられる、パイパー・エドシックらしいものが選ばれました。

ブレンドするリザーブワイン候補は、下記の4種類です。
A:2019年、シャンパーニュ北部で収穫されたムニエ。ピーチやアロマのチャーミングさとフレッシュな酸味が特長。
B:2016年、グラン・クリュのシャルドネ。シトラスのなかにミネラルの塩味がしっかりと。
C:2013年、モンターニュ地方で収穫されたピノ・ノワール。スパイシーでスモーキーな力強さがある。
D:シャルドネとピノ・ノワールのマルチヴィンテージ。70年代から現在に至るまで注ぎ足されているパイパー・エドシックの歴史とともに磨かれてきた原酒。奥深く多層に広がる複雑な味わい。
上記4候補にそれぞれ2種類、異なる量の糖分を加えた計8種類。A1、A2、B1…とナンバリングされたリザーブワインが、各スタッフの前に美しく並べられます。

この限定シャンパン造りには、最高醸造責任者のエミリアン氏も同席。「これから私たちが手掛けるのは、調理にたとえると最後の味付けです。些細なことだと思われるかもしれませんが、シャンパンの味わいに大きな変化を与えるとても重要な工程です」と伝えられると、パン娘は「松屋銀座の開店100周年を記念するシャンパンを決めるんだ」という、ことの重大さを再認識。

ただ、より責任を大きく感じているのは、和洋酒・ギフト担当バイヤーの関戸氏のようです。これから、あの格式高いパイパー・エドシック流の方法で、松屋のお客様のためだけの味を決めていくのです。それは頭ではなく舌の感性を優先するための、ブラインドテイスティング。どのグラスにどのリザーブワインが注がれているのか、一行は知らされていません。「理論より、フィーリングを重視してください」と、エミリアン氏。

1杯ずつ、テイスティングして感想をメモ、そしてディスカッション…、というプロセスを重ねて候補を絞っていきます。
「Aはどちらもパワフル! A1とA2の違いを言葉で表現するのが難しい…、でも、A1の方が若干甘み強めかしら!? Bは味に丸みがあり、バターのようななめらかさ。女性に好かれそうなイメージね…って、私の味覚、合っているか心配ですが…」と、パン娘は迷いながらも味覚と嗅覚に意識を集中させて感想をしたためます。

そんなパン娘が頼りにするのは、日本リカーブラザーズ(パイパー・エドシック日本代理店のお2人)。世界中のお酒を知り尽くしている彼らもどのグラスに何が入っているのか知らされていませんが、表現する言葉選びやその根拠にいちいち感動せずにはいられないパン娘。

やはり不安は拭いきれませんが、「私の素直な感覚も、きっとお客様の“美味しい”のための一滴に!」と気持ちを奮い立たせ、テイスティングを続けます。エミリアン氏は「キャンバスにどんな絵を描こうかなと考えるように、シャンパンのゴールをイメージしてみるといいですよ。そのゴールに必要な世界観は、ピノ・ノワール?ムニエ?それともシャルドネかな?」とアドバイス。

パン娘とライターは、たどたどしいながらも「私たちのように知識は少ないけれど、美味しいものが好きな方もいらっしゃるはず」と、素人ならではの感覚を懸命に表現します。
どのグラスがどのリザーブワインか想像しながら、目指す味わいを純粋に追求し続ける一行。自身の好みやどんな方に好まれそうか、召し上がっていただきたいかを想像しながら、全員が本気でシャンパンと向き合います。緊張感のある静かな空間で、それぞれが味覚と嗅覚、そして想像力を研ぎ澄ましていました。

とりわけ真剣な表情でいたのは、関戸氏。バイヤーの彼女が最終決定権をもつため、やはり誰よりも責任を感じているのでしょう。「ひと口目の感動も大切だけど、美味しかったという感覚が口内で広がり続ける余韻も魅力的…」と、悩みながらメモをとります。

これまで多くの知識と経験を積み重ね、かつ根っからのシャンパン好きという関戸氏は、「お客様にとって最高の体験となるようなシャンパンを」という確固たる想いを抱いてフランスを訪れています。ただその重責からか、周囲が想像する以上に緊張しているようです。そんな心中を表すかのように、関戸氏のスペースだけどんどんグラスが乱れ並んでいきます。

それぞれが意見を出し合い、リザーブワインは8種類から3種類に絞られました。新たに1、2、3とナンバリングされたリザーブワインたちは、奇しくも関戸氏が最後まで悩んでいた3種類。さぁ、テイスティングは佳境を迎えます!

パン娘のテイスティングも、少しこなれてきた…ような雰囲気。「1は3つのなかで唯一、まろやかさを感じる。2は味わいも香りも爽やか。3は塩味があり、少し濃い味わい…」と、真剣な表情でメモをとります。

「力強く、しっかりとした味わいもいいけれど、繊細でエレガントな余韻が長く続くスタイルもいいな…」そうつぶやきながら、談笑するスタッフをよそに一瞬笑顔が消える関戸氏。

松屋銀座では、ワインをギフトとして選ばれるお客様が多いそう。またそうした松屋のお客様が好むのは、いわゆる“優等生”ではなく“想い”が伝わるようなドラマティックなもの。関戸氏は、「この限定シャンパンも“好かれること”にとらわれず、私が1番“お客様に贈りたい”と感じるものにしよう!」と心を決めたようです。

関戸氏が出した答えは、「エレガントでフレッシュ、そして余韻がもっとも長く感じられる、忘れられなくなりそうな味わい」という1のリザーブワインでした。
「ごくんと飲んだ後の、いつまでも続く心地よさが決め手になりました。イメージは、楽しい時間を過ごした後の“今日は幸せだったなぁ…”と余韻に浸るひととき。大きな満足感と少しの切なさが入り交じる、あのなんとも言えない感覚をお客様に味わっていただきたくて…!」と、笑顔で語ります。

ついに決定しました!『PIPER-HEIDSIECK Essentiel by MATSUYA GINZA』の誕生です。会場の緊張感がふわりとほどけ、笑顔と拍手、そして安堵のため息があちらこちらから聞こえてきます。
松屋銀座が選んだリザーブワインについて、エミリアン氏はこう話します。「シャルドネとピノ・ノワールをブレンドしたこのリザーブワインを、私たちは(正確には少し違うのですが便宜的に)『ソレラ』と呼んでいます。スパイシーで力強く、シルキーな口当たりが魅力。そして、まろやかで美しい余韻ももたらします。マダム関戸の気持ちにマッチする、美しいワインですよ」

それぞれが、それぞれなりの想いをもって挑んだ松屋銀座 開店100周年の限定シャンパン造り。ランチの準備が整うまでの時間を和やかに過ごすべく、一行は晴れ晴れとした表情で会場へ。空はそんな気持ちに共感してのことか、見事な快晴。まずは、テラスでお祝いのエッセンシエル。「…越しの関戸が、素敵なマダム過ぎませんか?」と、パン娘が吹き出します。

大きな仕事を終えた者しか到達することができない、新しい世界が彼女には見えているのでしょう。
とはいえ、まだまだ使命は続きます。この時間にラベルの最終チェックをしなくてはなりません。この限定シャンパンのラベルには、松屋のロゴとバイヤー・関戸氏のサインがプリントされます。

パン娘も、「エッセンシエルは、日本の食事ともよく合うそうです。そんな人気シリーズから最高のスペシャルエディションをお届けできるなんて、本当にうれしいですね!」と、エッセンシエルをごくり。あら?お酒、弱いんじゃなかったでしたっけ…?
後日、パイパー・エドシック社よりメッセージが届きました。
「松屋銀座のクルーのみなさん、お疲れ様でした。エッセンシエルの限定ボトル造りは、なかなか難易度の高いことですが、みなさんはその課題に見事に取り組みました。私たちも完成が楽しみです。松屋のお客様も、2025年の松屋銀座の記念日を『パイパー・エドシック エッセンシエル バイ マツヤギンザ』でお祝いしましょう!」
最終回となる次回は、待ちに待った限定シャンパンが松屋銀座に到着します!パン娘と関戸氏によるテイスティングの模様や具体的な販売情報をお届けしますので、お見逃しなく!!