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食品
冷凍グルメで出合う名店の味。
その魅力を現場からさらに深掘り!~銀座 みかわや編~
「松屋銀座」地下2階に冷凍食品コーナーがあります。
モダンな雰囲気のコーナーにずらりと並ぶ商品のなかで、ひときわ異彩を放っているのが「ギンザ フローズン グルメ」。
名店のメニューをそのままパックして急速冷凍しているから、お店の味そのままをおうちで楽しめます。
忙しい毎日には、簡便性に優れたおかず用の冷凍食品はありがたい存在ですが、「ギンザ フローズン グルメ」は日々の食卓に華やぎと彩りを運んでくれるとびきりの味揃い。
ひとつの料理に込められたお店のこだわりはさまざまです。
この連載で、各店と商品のストーリーをお届けします。
その想いを知れば、さらにおいしさが広がるはず。
特別な日に、特別な味をおうちで。
ギフトにも最適ですから、幸せのおすそわけもどうぞ。
今回ご紹介するお店と商品は
「銀座 みかわや」の「かにクロケット」
「銀座 みかわや」とは
東京・銀座四丁目の交差点近く。夜になれば、暖かな灯りに吸い寄せられるようにお客様が扉の中に消えていきます。
1948年、創業者の渡仲豊一郎氏が「銀座 みかわや」を開業しました。第二次世界大戦前、豊一郎氏は横浜「ホテル・ニューグランド」で初代総料理長サリー・ワイル氏のもと、フランス料理の腕を磨き、戦後独立。当時、一流ホテルのレストランで主流だった、かにクロケットをはじめ、ハンバーグステーク、ハヤシライス、芝海老のグラタンなど、日本人が親しみやすい”洋食”をメニューに載せました。それから75年余り、フランス料理の伝統を守りながら、日本式の西洋料理店として大勢のお客様に愛されてきました。洗練された味と雰囲気、温かなサービスに親子二代、三代と、通い続ける常連さんもいらっしゃいます。
今回は、四代目店主の渡仲晋平さんに、お店のこと、フローズン・グルメの商品でもある看板メニュー「かにクロケット」のお話をお伺いします。
――75年間以上、名店との評判をキープしてこられました。四代目店主として、心掛けていらっしゃることはあるのでしょうか。
渡仲さん 「変わらないであり続けること」。これがいちばん大切だと思っています。味やサービス、お店の雰囲気……。実は、お店のことはお客様がいちばんご存じなんです。私どもが気づかなくても、お客様はすぐおわかりになる。数年前にデミグラスソースの味がおかしいとお客様に言われて驚き、厨房に確かめたところ、あるお客様から甘いほうがよいとのアドバイスを受け、密かに玉ねぎを飴色まで炒めたものを先代が多めに加えていたんです。
――微妙な味の差に気づいて指摘してくださるとは! 信頼関係がないとなかなかできないですね。
渡仲さん そうなんです。親子何代で、あるいは同級生同士で長年通ってくださる方も多く、私やスタッフと長くお付き合いさせていただいていますから、率直に話してくださる方が多くて、ありがたいです。だから、お客様がうちを作ってくださっていると言っても過言ではありません。私たちも建前だけでお話ししないようにしています。値上げをしなければならないときはその理由をきちんと説明しますし、仕入れ先の事情で素材が変わったときなども、正直に内情をお話しします。
――コロナ禍でも、ずっと営業されていたと聞きました。
渡仲さん 実は東日本大震災のときもずっと開けていました。「お店の灯りにほっとして、後ろ向きになりがちな気持ちが明るくなりました」というお声があったことを思い出し、コロナ禍でも開けていました。スタッフの雇用を続けたかったこともあります。何より、「みかわや」が開いているのを見て、夜中にコンビニエンスストアが開いていたときのような安心感があったと、お客様に言われたときは嬉しかったですね。開け続けていたことで、コロナが終わってからに割とすぐにお客様の足が戻ったのはご褒美だと思いました。
――「ギンザ フローズン グルメ」に参加されたきっかけは何でしょう。
渡仲さん コロナ禍でお店には行けないから持ち帰りメニューをとのお客様のリクエストが多かった時期に、ちょうど「松屋」さんからお話がありました。お客様のご要望に応えられると参加したんです。
――もともと冷凍食品を作られていたんですか。
渡仲さん 今回が初めての試みです。冷凍食品に適しているものをうちのメニューから探す作業を繰り返しました。何度も作って急速冷凍しては解凍して試食しました。結果、お店の味に限りなく近い状態で再現できる計7品に絞りました。
――今回ご紹介する「かにクロケット」は創業当時からの看板メニューのひとつですね。私もお店でこちらをよく注文します。
渡仲さん ありがとうございます。祖父がサリー・ワイルさんから受け継いだフランス料理の技術とエスプリが詰まった料理です。今も当時の味を守り続けています。厨房で作り方を見てみましょうか。
――ぜひ! キッチンがクリーミーな香りに包まれています。これはベシャメルソースとカニを合わせたものですか?
渡仲さん そうです。ベシャメルソースは、ホワイトソースとも呼ばれていますね。ナイフを入れたときに、クリームが流れ出てしまわないよう、うちのベシャメルソースは少しかためです。カニはタラバですが、全体の40%も入っているんですよ。ベシャメルソースとカニを合わせたら、成型しやすいように冷蔵庫で冷やしておきます。
――40%も! だから、口に入れた途端にカニの濃厚な風味がフワーッと広がるのですね。
渡仲さん カニのゆで汁も大切なんです。このゆで汁が加わることで風味がぐんとよくなります。ベシャメルソースとカニのほぐし身、ゆで汁を合わせて丸めたら、小麦粉をつけ、卵液にくぐらせてパン粉をつけます。
――料理人さん、作業が速い! 卵液に浸し、パン粉をつける作業を両手で同時にするのは神技!
渡仲さん 1回に70個、35人分を作ります。冷凍食品の仕込みはランチとディナーの合間の限られた時間に行うので、とにかく無駄な動きをせず、スピーディーに仕上げます。
――パン粉をつけてから小判形に整えるのですね。とても丁寧に、慈しむように整えていらっしゃる。大切に作られていることが伝わってきます。
渡仲さん ひとつひとつの工程を丁寧に進めれば、最後の仕上げも美しくなるんですよ。パン粉は中挽きのやや細かめな感じで、パン粉専門店から仕入れています。創業時からお世話になってきたパン粉屋さんが、コロナ禍で廃業されてしまって。そこのパン粉じゃないとうちの味が出ないんです。必死に探しました。7社にお願いして使ってみて、やっと以前に近いものを見つけました。
――パン粉ひとつでも味が変わってくるのですか。
渡仲さん うちのために特別に挽いてもらっていたんです。目が粗いとザクザクして、口に入れた瞬間は美味しいのですが、ちょっと時間が経つとダレてしまう。細か過ぎるとパン粉の食感が楽しめない。うちのクロケットの口当たりの決め手になりますので、慎重に選びました。
――たっぷりの油で泳がすように揚げるのは、お店ならではの贅沢な揚げ方です。
渡仲さん 175℃の米油で温める程度に。きつね色になったらOKです。米油はクセがなく、揚げ上がりが軽くなります。
――美味しそう! これをそのまま急速冷凍にするのですか?
渡仲さん 余分な油が切れたら、私が急速冷凍機のある「日東コーナー」※さんに急いで自転車を走らせ、急速冷凍してから真空パック化します。
※現在、「日東コーナー」から急速冷凍機を借りています。
――社長自ら、自転車で?
渡仲さん 揚げたてを急速冷凍するのが、美味しさの近道です。歩けば15分くらいかかり、劣化してしまう。自転車は5分ほどで着いちゃう。ゲリラ豪雨の日も、厳重にクロケットを包んで自転車で走りましたよ!
――全てが手作業。頭が下がります。これが美味しさの秘密なんですね。
渡仲さん 足作業でもありますね(笑)。お店のメニューと同じ工程で作っているので、たくさんは作れません。店頭からなくなって、お客様をお待たせしてしまうこともあります。申し訳ないのですが。
――素材選びから調理工程までのこだわりが、老舗の変わらぬ美味しさに繋がっているのですね!
渡仲さん はい、今年で創業77年ですが、私の目標は創業100年まで、いまの「みかわや」を守っていくことです。
――この味を受け継ぎ、次世代へ伝えてくださったらうれしいです。魅惑のカニのクロケットの美味しさの裏側を教えていただき、ありがとうございました。
銀座みかわや
「銀座 みかわや」の「かにクロケット」
※調理後の写真はイメージを含みます。実際の商品とは異なる場合がございます。 ※数に限りがございます。売り切れの際はご容赦ください。 ※商品につきましては、地下2階ギンザ フローズン グルメ担当までお問い合わせください。
<銀座 みかわや>かにクロケット
内容量:190g (賞味期限 製造日より270日/冷凍)
3,780円(税込)
地下2階ギンザ フローズン グルメ
※現在大変多くのご注文を頂戴しております為、「かにクロケット」のご注文承りを中止しております。2025年2月頃より販売再開予定となっております。何卒ご了承ください。
実食レポート
クロケット2個と付け合わせの野菜入り。
クロケットは、オーブントースターもしくはオーブンを必ず予熱して、凍ったまま付属のアルミ皿ごと入れて22分。まるで揚げたて!たっぷり入っているカニに、ゴージャス感が爆上がり。ベシャメルソースのまろやかな味わいと共に、特別な日のメインディッシュにも、ひとつずつお皿に盛って贅沢な前菜としても。
付け合わせの野菜は湯煎で5分。それぞれの火入れが完璧で、素材の味が際立っています。
ボリューム感のある白ワイン、もしくは軽めの赤ワインに合いそう。