遊びのギャラリー1979
期間限定ショップ
リビング・ホビー

クリエイティブセレクト2024
新木かよ 個展
刺繍でつくり上げる現代アート

2024年7月10日(水) - 7月16日(火)
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あるときは鳥に見え、あるときは花に見え。壁にかけた1枚のアートがもたらしてくれるのは、そんな自由な想像力と何にもとらわれない無垢な心。 アートってなんだか難しい。そんなふうに感じている人にこそ見てもらいたい新木かよさんの作品を、プロデュースするMICのEmikoさんの解説のもと、ご紹介します。
プロフィール
新木かよ
1984年東京生まれ。渋谷区在住。中学生の頃より刺繍を始める。東京やニューヨークのギャラリーにて、個展やグループ展を多数開催。2006年、第11回家庭画報大賞「夢のある暮らし」に選出。2019年、2023年、松濤美術館公募展入選。

 松屋銀座の7階。京橋側のエスカレーターを昇った脇に、ひと際、開放的なギャラリーがあるのをご存知でしょうか。ギャラリースペースと通路を隔てる壁はありません。もちろん、扉もありません。だれもが気楽にアートに触れ合える、開けた場。  ── その名は「遊びのギャラリー1979」。  暮らしの中の「遊び」をコンセプトに、日常にとけ込むクリエイションをご紹介しています。創造性に富んだ作り手独自の表現を、どう受け取り、どう楽しむかはそれぞれの自由。ただの「観賞物」にとどまらないアートの奥深さを、この場を通してお伝えしていきたいと考えています。  今回、ご紹介する作品は、糸と布でつくり上げられた、新木かよさんのアート。

「作品にタイトルはつけていません。
十人十色、それぞれの感じ方があるはずだから」
 この作品にタイトルをつけるとしたら、みなさんは何とつけますか。 「海の中から見上げた水面」 「雲の断層」 「地上を映す水たまり」 「鏡に写る景色」 「そのどれもが正解。その日によって見え方が違うんですよね」とプロデューサーのEmikoさんは語ります。1本1本の糸が流れをつくり、かたまりとなって形を成す。この有機的な形状が、見る人の「そのとき」の心情とリンクするのでしょう。いかようにも見えるし、いかようにも変化する、まさに「生きた」作品。  この生気は、布地に針をくぐらせることで宿っていきます。  単に糸を「置く」のではなく、「縫う」という作業を経て、芯の通った形に育っていく作品。その過程は、植物の生育と近しいものがあるのかもしれません。布地に糸の根を張りめぐらせ、縦横無尽に糸の枝葉を伸ばす。その力強い、純粋無垢な生命力が「刺繍」という技法によって、表現されています。  作品によっては1万針以上にも及ぶこのステッチを、新木さんは驚くほど几帳面につくり上げていきます。作業に集中しているときは、朝から晩までひたすら手を動かし、時間が経つのを忘れてしまうことも。  そんな集中力の賜物である「繊細な仕事」が、作品の背景に潜んでいるのです。  一針一針コツコツと。刺繍という技法の魅力は、そんな積み重ねた時間が縫い目として、見えるところにもあります。ひとつ飛ばしで進められないのは、人生も同じ。スランプもあるし、気が乗らないときもあります。それでも気を取り直し、糸を通した針を手に、布に向かう。刺繍は新木さんのライフワークと言えそうです。

1. 大きなテーブルに布を広げて、針を刺す新木さん。使っている布はスウェーデン刺繍用の二重織りクロス。 2.布の織り目の下に糸をくぐらせてステッチを施す「スウェーデン刺繍」の技法をベースに、独自のアレンジをプラスして作品をつくっています。

既成概念にとらわれない、自由な作風が
心の緊張をほどいてくれる
 はじめてつくったのは、新木さんが中学生のとき。特別支援学級の先生に教えてもらいながらつくった刺し子が、最初の作品でした。はじめてにもかかわらず、周りが驚くほどの器用さを発揮し、そのときつくった刺し子は後に作品展に出品されることになったのだそう。「注目されることで、創作意欲に弾みがついたんでしょうね」と、MICさん。次第にアーティストの道を歩むようになった新木さんの作風には、遊び心や独創性が加わり、他に類を見ない「刺繍アート」という独自のクリエイションを生み出しました。

上は2010年、下は2015年の作品。一糸乱れぬ美しいステッチに刺繍ならではの糸の「遊び」のアレンジが加わり、1点1点表情の違う作品が誕生していきました。

 あえて糸端をのぞかせたり、糸の輪をつくってアクセントにしたり……。そんな経緯を経て、現在の糸の特性をそのままいかしたダイナミックなスタイルに至りました。

近年の作品たち。束になった糸のうねりが躍動感を生み、よりエネルギッシュな作風に。 1.2.2018年作。3.2023年作。4.2023年作。5.6.2024年作。使っている刺繍糸のタグをアクセントにしている作品も。

ひと針ひと針の糸の重なりが生み出す
色彩のハーモニー
「絵画や立体造形、音楽など、幼少期からいろいろな芸術に触れてきましたが、彼女がいちばん興味を示したのは刺繍や織物。その材料である糸に惹かれるところがあるのかもしれません」  絵の具と違い、他の色とは決して混じり合わない糸の色。  色は混じると暗くなるという特性から、印象派の画家たちは絵の具を混ぜずに、ひとつひとつの筆触を隣り合うように配置し、鑑賞者の網膜状の錯覚によって2つの異なる色が1つの色に見えるような技法を編み出しましたが、そもそも糸は溶け合うことはありません。個々の色の重なりが作品の中で調和し、美しいハーモニーを奏でます。そこにひとつでも違う色が混じると、まったく違う印象になるのが、糸を用いたクリエイションのおもしろいところ。 「糸の色選びにはとてもこだわりがあるようで、たまにはこんな色も、と提案してみても決して受け入れてくれません。自ら選んだ気に入った色を大量にストックしています」

愛用している糸はフランスのメーカー「DMC」のもの。とても発色がよく、光沢があるのが特徴。

 とりわけ今、いちばん好んで使用する色は白。  白の中にも黄色がかっていたり、少しくすんでいたりと、いろいろなニュアンスがありますが、とにかく、まっ白な糸が新木さんの心を掴んで離しません。

2024年作。近頃は白い糸を多用した、のびやかで清々しいテイストの作品が生まれています。

「作品の色合いは、そのときの環境や自分の気持ちなどがダイレクトに影響しているようです。彼女の目には今、白が飛び込んでくるんでしょうね。そして願わくば、この作品を目にする方にも彼女と同じように心を開放して、アートを楽しんでもらいたいと思うんです。何に見えてもいい。アートの素晴らしさは、その自由さにあると思うから」  琴線に触れる刺繍アートを、この機会にぜひご覧ください。

クリエイティブセレクト2024 第5週  新木かよ個展 刺繍でつくり上げる現代アート (プロデュース:MIC) 7月10日(水)ー16日(火) ※初日は午後12時開場、最終日は午後5時まで 7階遊びのギャラリー1979

詳しくはこちら

※画像はイメージです。

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