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クリエイティブセレクト2024
黒田有里 個展
「The March ~マロニエ通りのオオカミちゃん」

2024年6月26日(水) - 7月2日(火)
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※最終日は午後5時閉場
アーティストの黒田有里さんが生み出した「オオカミちゃん」が、松屋銀座にやってくる! ん、でも、オオカミちゃんって何者? 作り手の黒田さんに、オオカミちゃん誕生に至るまでのお話と製作の背景を伺いました。
プロフィール
黒田有里
1971年北海道生まれ。20代にぬいぐるみ作家として活動を開始。2008年「黒ねこ事務所」を設立。ぬいぐるみやドローイングなどの作品を発表する。2017年より「オオカミちゃん」の製作をスタート。ギャラリーや美術館などを舞台にインスタレーションを行っている。 instagram @necoquero

どこを見ているのか。何を考えているのか。
その不思議な表情が想像の世界へと誘う。
 オオカミちゃんづくりは、まず、全部のパーツをそろえるところから始まる。 型に沿って布地を裁断し、各パーツを縫い合わせ、綿をぎゅうぎゅうに詰め、すべてを連結させる。その後、鼻を刺繍して、牙の形を整え、舌を挟み込み、耳と目をつけると、オオカミちゃんが出現する。  舌はべろんと長く、どこを見つめているのかわからない、つぶらな瞳。ただの愛玩ではない不思議さがオオカミちゃんの魅力だ。 「舌は肉感を出すためにピンクの布地を草木染めで少し茶色にしています。目は磁器。 市販のパーツはきれいに整いすぎているので、自分で成形した、いびつな丸いパーツに目玉を描き入れているんです」

1. アトリエの壁には各パーツの必要枚数を記したメモが。 2. ふかふかのボディ(生地)になじむ、やわらかな質感の磁器の目がよくお似合い。 3. 棚の縁についている画鋲は、磁器の目にニスを塗るときに使用する。 4.帽子の型は綿詰めが綺麗にできるよう、縫い代を割るのに使うもの。このカーブがちょうどいいのだそう。 5. 白で統一されたアトリエ空間。「雪が好きなので、白に包まれたいという願望があるのかもしれません」 6. 額縁は以前の展示でつくったもの。中にいるのは黒田さんの地元・北海道の民芸品「セワポロロ(招福の使者)」。

自分の表現を探し続けた先にいた、自分とは違う存在。
それが、オオカミちゃん。
 そもそも黒田さんがぬいぐるみをつくり始めたのは、小学生の頃。「洋裁をしていた母の姿を近くで見ていたからか、夏休みの自由研究では、ぬいぐるみやマスコットをつくっていました」。でも、その時点では、あくまで好きなもののひとつ。短大を卒業し、会社員として働いていたときに、パニック障害になってしまったことが、ぬいぐるみへの関心を高めた。 「家で休んでいるときに、ベッドの脇に飾っていたテディベアのポストカードが目に入り、漠然と“こういう子が欲しいな”と思ったんです。弱っていたから、安心したかったんでしょうね。でも、同じような子を探したけど見つからなくて」  じゃあ、自分でつくってみよう。  そう思い立った黒田さんは、自ら型紙を起こしてぬいぐるみをつくり始めた。クマをはじめ、ネコやパンダ、ブタなど、いろいろな動物のぬいぐるみをつくっては、展示販売のイベントに出展する日々を送っていたそうだ。 「とにかく、自分がつくったものをお客さまが買い求めてくださることがとてもうれしくて。でも次第に、自分がつくるものに魅力を感じられなくなってしまったんです。あのポストカードのテディベアのように、“大丈夫”と安心させてくれるぬいぐるみをつくりたかったのに、でき上がるのは、逆に“大丈夫?”と聞きたくなる子ばかりで」

アトリエのあちらこちらにいる、かつてつくったぬいぐるみたちが、製作の様子を見守っている。

スランプに陥った黒田さんは、その後、8年ほど作家活動を休止した。  自分の“表現”を探るため、外国語を学んだり、お絵描き教室に通ったり。さまざまなことにチャレンジする中で、ふと目にした友人のイラストレーターの作品に、スランプ解決の糸口を見つけた。  そこに描かれていたのは、自身の内面をさらけだした絵。 「それを見て、なんだ、こんなに素直に自分自身を出してもいいんだ!って思ったんです。それからですね。また、ぬいぐるみをつくり始めたのは」  自分の気持ちが変わると、作風も変わるもので、その頃から、舌や歯を出した子や、ちょっと意地悪そうな表情をした子をつくるようになった。自分のつくるものが「みんなに受け入れられている」という実感を得られるようになったのも、その頃。ギャラリーやショップなどで展示会を重ねるうちに、多くの人が求めるものがどういうものなのかもわかってきた反面、今度は、そこに疑問を感じるようにもなった。「求められるがままに、いつまでも“自分の分身”のようなぬいぐるみばかりをつくっていて、いいのだろうか」と。  その頃、黒田さんの頭の中には、ある絵が浮かんでいた。  それは、まっ白なオオカミが、まるで中国の「兵馬俑(へいばよう)」のように、群れを成して立っている姿。  「なぜオオカミなのか、なぜ白いのかの理由は、自分でもよくわかりません。北海道出身で、雪が好きだったから、ひょっとしてそんな原風景が影響しているのかもしれないのですが」  いつかこのイメージを形にしたい。そう感じていた黒田さんは、売上げを問われない現代アートギャラリーでの個展の際に、オーナーの許可を得て、その思いを行動に移した。 「でも、ぬいぐるみを立たせる具体的な技術を知っていたわけではないんです。なんとなく、こうすれば立つかなという勘を頼りにつくってみたところ、偶然、立ったという感じで(笑)」  オオカミが自立した── 。  その必然の成り行きは、黒田さん自身とぬいぐるみの関係性にも影響を及ぼした。  「それまでは、自分のつくったものは、私そのもののように感じていたんですが、個展会場で列をなして立っているオオカミの群れを見て、あっ、もう私ではないんだなって」

以前の展示の様子。初期と今のオオカミちゃんを比べると身長は10㎝ほど高くなり、強度も増しているのだそう。

「対等な関係というよりは、わたしはオオカミちゃんのサポーター。
オオカミちゃんのかわいさを、たくさんの人に見ていただきたいんです」
こうして「黒田さん」と「オオカミちゃん」の日々が始まった。

「せわしなく作業していると、“もっとちゃんとこっちみてー!”って声が聞こえてくるんです(笑)」

 製作中は、オオカミちゃんにうっかり自分の感情を移してしまわないよう、ニュースを見ない。外出や人と会うことも極力控え、気持ちが揺れないように努めている。 「オオカミちゃんに向き合う前に心身を整えておきたくて、自分のメンテナンスに気を配るようにもなりました。ちょっと何かあると整体に行ったり、ヨガに行ったり」  オオカミちゃんはオオカミちゃんだから、決して自己を投影したりはしないのだ。  そうしてでき上がる、オオカミちゃんの群れ。  一見すると、同じ姿、形。それでも、それぞれに個性があるように見えるのは、黒田さんからは切り離されたところで生まれた、独立した個体だからだろう。 「オオカミちゃんに興味のない人には、全部同じように見えるのかもしれません。でも、よく見ると、ちゃんと違う。たぶん、私自身がそういうのが好きなんだと思います」 「この子」と迎えてくれた人のもとで、それぞれの物語が始まる。それがうれしい。 「その人が悲しい気持ちだと、悲しそうに見えるかもしれない。楽しいときは、笑っているように見えるかもしれない。私がかつて、“大丈夫”といってくれるぬいぐるみを求めていたように、その人のもとで、その人のオオカミちゃんになってくれればいいんです」

フィッティングモデルを務めているオオカミちゃん。腕は可動するので、脱ぎ着もばっちり!

オオカミちゃんが立つところに物語が生まれる。
36体なら、36の物語が。
 だから、製作時に名前はつけない。  ただ、物語の手がかりになるような一張羅をプレゼントして、一体一体を送り出す。  このオオカミちゃんはどんなおしゃれがしたいんだろう。  次回の行き先は、なにせ銀座のデパート。とっておきの服を用意しなくては。

1. ロックミシンの「sakura」とカバーステッチミシンの「kanade」は衣装づくりの頼もしい相棒。 2. オオカミちゃんたちの服はオーダーメイド。「銀座にふさわしく上質な生地をとりそろえました!」

 黒田さんは、現在、「チーム松屋銀座」の36体のオオカミちゃん一体一体にお伺いを立てながら、衣装づくりを進めている。  オオカミちゃんたちが着用する服は、毎回、個展会場の雰囲気にあうように仕立てているそうで、今回用意したのは、高品質の生地ばかり。しかも、オオカミちゃんの間で話題のファッションブランド「yuri kuroda」のアイテムも初お披露目とあって、そのおしゃれっぷりも見逃せない。  6月26日の晴れ舞台を待つ、オオカミちゃんたちも今ごろそわそわしていることだろう。 「チーム松屋銀座」のオオカミちゃんたちのパレードを、どうぞお見逃しなく。

クリエイティブセレクト2024 第3週  黒田有里 個展「The March 〜マロニエ通りのオオカミちゃん」 (ディレクション:北条満季子) 6月26日(水)ー7月2日(火) ※日曜日は午後7時30分、最終日は午後5時まで 7階デザインギャラリー1953

詳しくはこちら

※画像はイメージです。

 まっ白な体にぽっこりとしたおなか。  二本足でスッと立つ、同じ背格好のぬいぐるみ。  作り手の黒田有里さんは彼ら、彼女らを「オオカミちゃん」と呼ぶ。  一体一体に名前はない。

6月26日から始まる個展に向けて、製作中のオオカミちゃんたち。立ち姿がなんとも頼もしい。

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