デザインギャラリー1953
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「Pfütze jewelry exhibition」 いつもの装いに “自然の美しさ” を宿したジュエリーを

2023年6月6日(火) - 7月17日(月)
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雨上がりの地面に模様を描く水たまり。 ぷっくらと膨らんだまるいものや、美しいくびれのひょうたん形など、いつもなら通りすぎてしまう景色の中に、ふと現れるユニークな形。 ──「Pfütze(プフッツェ)」は、そんな身近でありながらも、日々の慌ただしさのなかで見落としてしまいがちな “自然物” や “自然現象” に着目して、ジュエリーを展開しています。
「プフッツェ」はドイツ語で「水たまり」の意味。
貴金属を用いて、森羅万象のきらめきをジュエリーに

写真は「プフッツェ」が今までに手がけた作品の一部。シリーズにより、ピアス(一部イヤリングに変更も可能)、イヤーカフ、リング、ネックレス、ブレスレットなど、展開はさまざま。

 

デザインから製作までを手がけるのは、北康孝さん・賀来綾子さんご夫妻。 ともに美大を卒業後、社会人経験を経て、2007年にブランドを立ち上げました。

「夫の母親が彫金をしていたこともあり、なにげなく始めたんですが、これがとても楽しくて」と賀来さん。 それぞれの初作品は、北さんは蜂の巣のブローチ、賀来さんは植物のリングだったそう。

「何をモチーフにするか、どういうものをつくるかなどを事前に話し合ったわけではなく、互いに好きにつくったものが、偶然、 “自然物” だったことが、ブランドの方向性を定めるきっかけになりました」

北さんの最初の作品である「蜂の巣」に修正を加え、商品化したピアス。薄い形状ですが、耳に着けるとはっきりとした陰影が浮き立ち、モードな雰囲気。

賀来さんの最初の作品である「植物」に修正を加え、商品化した「プラント」のリング。植物が指に巻きつくような有機的でやわらかなデザイン。

以降15年にわたり、水滴、双葉、かすみ草、雨と雲・カミナリ、シロツメクサ、海辺……など、自然物や自然現象にまつわるジュエリーを発表し続けています。

珊瑚・貝・ヒトデ・海藻など、海辺で見かけたものをモチーフとした「海辺」のシリーズは、2014年に誕生。写真のピアスのほかネックレス、ブレスレット、ペンダントの展開も。

これら「プフッツェ」の作品づくりは、どれもまず知ること、観察することから始まります。

実際に手に入れられる植物の場合は本物を採取し、自然現象の場合は関連書物を読み、よくよく対象物と向き合った上で、ふたりの視点によって切りとられる、唯一無二の形。

「そういえば」と、北さん。「子どものころ、地元の海岸でひろった貝で標本をつくったことがあるんです。きれいなものや不思議なことに対する好奇心や、それを自分なりに解釈したいという思いは、そのころから変わっていないのかもしれないですね」

ジュエリー製作のヒントになった書物の一部。「図鑑や事典は、読むたびに発見があり、おもしろいです」。なかでもお気に入りは、多田多恵子さんの著書。

北さんが小学校2年生の時につくった貝の標本。地元・高知県の海岸で数年間かけて拾い集めた貝が詰まっています。「海辺」シリーズを制作する際の資料にもなりました。

2011年より毎年開催している松屋銀座・7階「デザインギャラリー1953」での個展「Pfütze jewelry exhibition」は、これらのコレクション、そして、新作のお披露目の場でもあります。

こちらの写真は昨年の「Pfütze jewelry exhibition」の会場の様子。全シリーズがそろうまたとない機会。「プフッツェ」の世界観を存分に堪能できます。

ジュエリーは試着可能。気に入ったものがあれば、ぜひスタッフにお声かけを。

新作へのアプローチは主に2パターンあり、ひとつは「イメージ」先行型。

昨年、2022年に発表した「野原」のシリーズは、その代表例です。

「野原」シリーズは、ピアス、イヤーカフ、リングの展開。それぞれのアイテムにより、草花の組み合わせが異なります。

「たくさんの草花が咲く、原っぱの楽しげな様子を表現したくて何年も前からノートに描き留めていたんですが、それを形にする具体的な方法が思いつかず、ずっと手をつけられずにいました。ところが昨年ふと、今ならできそうという感じがして。いろいろな作品をつくるうちに技術面の引き出しが増えたことが、この形につながったのだと思います」

 

モチーフにした植物は、オオイヌノフグリ、オニタビラコ、カタバミ、サクラソウ、スズメノカタビラ、タンポポ、ハコベ、ヒナギク、ヘビイチゴ、ミミナグサの全部で10種類。

そのほとんどは野原で見かける身近な植物ですが、ただ唯一サクラソウは、近年、日本国内での自生地はほぼなくなってしまい、保護地区でしか見られません。

 

「日常のなかで、ふと足元を見たり、少し目線を変えたりするだけでこれらの植物を見つけられ、その小さな存在のたくましさや生命の神秘を感じることができます。ですが、サクラソウのように以前はどこででも見られていたけど、100年後には“あたりまえ”ではなくなってしまうかもしれない。この “今” の尊さを、意識にとめておきたいと思い、これらの10種類の植物を選びました」

型取りや彫金で葉や花のパーツをつくって原型を製作し、草花の繊細な質感を表現。10種類の草花のうちの数種類を組み合わせて「野原」を構成しています。

片や、「虹」や「朝日」のシリーズは、「素材や技法の探求心」が新作誕生のきっかけに。

「金属の色の研究を進めるうちに、金と銀という主となる2色以外に、微妙にニュアンスの違うカラーをつくり出せることに気がついて。この色みの重なりがつくる美しいグラデーションが、“光” に通ずるところから、落とし込んでいったシリーズです」

4種の金属によって「虹」の色彩を表現したピアス。左から、プラチナ×グリーンゴールド、プラチナ×ピンクゴールド、イエロー×ピンクゴールド、イエロー×グリーンゴールドの組み合わせ。

「朝日」は、陽がのぼり空の光が移り変わる情景を金属の色彩で表現。純金から12金まで、K24-K22-K20-K18-K16-K14-K12の7層のゴールドを組み合わせています。写真のイヤーカフは今回の個展で初お目見えの新アイテム。

ものづくりに対する純粋な思いがもたらす、澄んだ輝き

 

この美しい色調をつくるために、用いられているのが合金技術。

それ自体は公知の技術ですが、この技術を作品の芯として、ひいては商品化する際の製造方法として、 “発想” できるかというと話は別。大概の場合、商品化するまでの時間やコスト、労力を考えると、たやすくチャレンジできることではないからです。それをもってしても、雲をもつかむ熱い気持ちで、“目指す形” のために全力を注ぐ、その姿勢こそが「プフッツェ」ならではのカラー。

 

「作品と言えど、あくまで商品なので限度はあります。ですが、慣れ親しんだスキルの中で何かをつくるより、頭の中でぼんやり見えている形を実現できるための方法があるなら、それを試していきたい。ものづくりの根本である、“どうやったらつくりたいものがつくれるのか”という欲求を大切にしていきたい、と思っているんです」

 

それゆえ、作品によって使われている技法はさまざま。

デザインはもちろん、着け心地やサイズ感も加味しながら、彫金や鍛金(金属板や塊から形を切り出し、曲げたり叩いたりして成形する)、鋳金(溶かした金属を型に流し込んで成形する)など、複数の技法を駆使して、原型がつくられています。

イヤーカフの原型をつくっていたときの様子。「ほどよい幅や厚み、装着感を探るために0.1㎜単位で細部を詰めていき、何個も試作品をつくって完成形にたどりつきました」

試作を重ね、原型(デザイン)が決定した後は、工場に金属の流し込みや型抜きを依頼。仕上げの研磨作業は北さん、パーツの組み合わせは賀来さんが行っています。

また、素材にメッキを使用せず、ゴールドやシルバー、プラチナなどの貴金属のみを使っているのは、貴金属の色みが日常の装いに合わせやすく、お手入れをしながら長く愛用できるという観点から。

 

「一過性のものではなく、その人のもとでずっと輝き続けられるものを提案していきたいと考えています。そして何より、“身につける楽しさ” を感じていただけるようなものをつくっていきたいです。なんといっても私たちがつくっているのはジュエリーですから」

 

日常でも、ちょっと特別なときにも。 身につけるだけでふっと力がわいてくるような、自然の美しさを宿した「プフッツェ」のジュエリーを、この機会にぜひご覧ください。

クリエイティブセレクト2023 第1週 「Pfütze jewelry exhibition」

6月14日(水)ー20日(火)

※最終日は午後5時閉場

7階デザインギャラリー1953

プロフィール

Pfütze(プフッツェ)

 

北康孝さんは多摩美術大学、賀来綾子さんは東京造形大学卒業。結婚後、2007年にジュエリーブランド「Pfütze」を立ち上げ、ふたりでデザインから制作までを手がける。自然物・自然現象をモチーフとしたピアスやリング、ネックレスのほか、結婚指輪の制作も。

http://pfutze.com/

https://www.instagram.com/pfutze/

https://twitter.com/Pfutze_jewelry

クリエイティブセレクト2023 その他開催スケジュール

6月21日(水)ー27日(火) YUI MATSUDA × Ryui

6月28日(水)ー7月4日(火) biga × YURTAO

7月5日(水)ー11日(火) Summer Vacation

7月12日(水)ー17日(月) アキノヨーコ × いとうりえこ

 

※各会期最終日は午後5時閉場

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