その他
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森さんちに、おじゃましました “北欧” 経由、暮らしを楽しむ「これでいいんだ!」のアイデアvol.10

プロフィール
森 百合子mori yuriko
北欧5ヶ国で取材を重ね、旅や暮らし、デザインの情報を中心に発信。著書に『3日でまわる北欧』(トゥーヴァージンズ)、『北欧おみやげ手帖』(主婦の友社)、『いろはに北欧 わたしに“ちょうどいい”旅の作り方』(ダイヤモンド・ビッグ社)ほか。執筆活動に加えて、NHK Eテレ『趣味どきっ!』、NHK 総合『世界はほしいモノにあふれてる』などメディア出演や講演を通じて北欧の魅力を伝えている。

サムシング・オールド

結婚式の時に「古い物を身につけるといい」という言い伝えがありますが、家の中にも古い物があるといいなあと思います。ヴィンテージの家具や食器だったり、親や親戚、友人から受け継いだものだったり。そうした古い物には空間をやわらかな印象にする力があると思います。


北欧で訪ねてきた友人の家を思い出してみると、誰の家にも必ず何かしらの古い物がありました。といっても名作ヴィンテージ家具がずらりと並んでいるわけではありません。あちらでは蚤の市が身近な存在で、たとえば独立したり結婚したりと新生活を始めようという時にはまず蚤の市やリサイクルショップをのぞいて、家具や生活道具を安価に見つける人が多いのです。そして自分がいらなくなった物もすぐ捨てるのではなく、誰か別の人に使ってもらおうと蚤の市に出したり、譲ったりします。古い物が循環していきやすいのですよね。


わが家は家自体が古いのですが(築87年の建物なのです)、それに加えて家具や生活道具にも古い物を多く取り入れています。とくにリノベーションをした部屋には意識的に古い物を組み合わせるようにします。新しいピカピカの物だけの空間はなんとなく落ち着かないので、古い物の力を借りるのです。たとえば窓枠に古いレースのカーテンをつけたり、子どもの頃に使っていた雑貨を実家から持ってきて置くだけとか、そんな小さなアイデアでも部屋の雰囲気が変わります。


このポスターは、母から譲ってもらったもの。母が若かりし頃に仕事で訪れたデンマークで手に入れたと聞いています。首都コペンハーゲンの観光用ポスターで、1959年に制作されたものだとか。私にとっては大好きなミッドセンチュリー時代のデザインで「レトロなイラストが素敵!」なんて思いますが、母にとっては新しいデザインだったのですよね。私が好きな1950~60年代のデザインは、当時青春を過ごした母にとっては流行ど真ん中のデザインだったり、ちょっと時代遅れのデザインに見えたりするわけです。


北欧ではここ数年、ヴィンテージデザインのリバイバルブームもあって、古いデザインが復刻される機会が増えています。上記のポスターもそのひとつで、最近はポストカードなどでもこのイラストを目にするようになりました。こうして新しい世代に昔のデザインが再発見されて受け継がれていくっていいですよね。 同様にいま生み出されている新しいデザインも30年、40年と経てばレトロなデザインになっていくわけで、いつかヴィンテージやアンティークとして新しい世代に再注目されることもあるかもなあ、と考えると面白いですよね。そして物を選ぶ時には、できれば長く受け継がれる物、次の世代の、誰かのサムシング・オールドになるような物を選びたいなと最近は思うようになりました。


vol.9「北欧の夏のレシピ」はこちら

30年、40年後まで受け継いでいきたい物えらびを“お手伝い”

松屋銀座でお手伝いができそうな売場とイベントをご紹介いたします。

 

7階デザインコレクション

 

日本デザインコミッティーのメンバーによって選定された、世界中の優れたデザイングッズを取り扱うセレクトショップ。サムシングオールドになり得るアイテムが見つかるはず。

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