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リニューアルにあたって苦労されたことも多かったのでは?
武田: とにかく面積交渉が大変でした。どのブランドも世界観やサービスをお客様にお届けするには、このぐらいスペースが欲しいというのがあるから。「最高の場所です」とご提案してもなかなか受け入れて頂けなかったり(笑)

井上: こちらの提示案には、先方はまず突っぱねる。もっといい条件を引き出すための常套手段でした(笑)。でも、それもお互い真剣にいいビジネスをするためには必要なことなんですね。

武田: お客様にとって見やすく買いやすい売場でなければ、売上げは伸びません。その気持ちを強く持って、百貨店の売場としてどうあるべきなのか、と高い志と集中力を維持して粘り強く交渉し続けていかなければなりませんでした。

井上: ここ5〜6年、どこの百貨店も集客力という自分たちの強みを忘れてブランドに迎合した時期がありましたから。だから交渉でも取引先の条件を百貨店は渋々呑んできた。それを相手も分かっているから、強気で言ってくる。昔から化粧品の交渉は凄いよ、と聞いてたけど、『こんな事まで!』というようなこともしょっちゅう経験しましたよ。

坂尻: 悔しい思い、暗澹とした思いで眠れなかったりもしました。実際、アクセサリー売場では、お取引先と条件が合わず、思うようにならない出来事があったのも事実です。

井上: 結果的には残念だったけど、松屋の意志を通したという事だから。その覚悟で臨まないと、目指す売場はできないでしょうね。だから交渉が難航した時、上層部から現場まで1つになって、先方に『松屋銀座の売場はこのように作りたいのでご協力願いたい。それをご理解頂けないのなら、仕方がないですね』とハッキリ言えた事も、とても大きかったと思います。

今回のリニューアルでは海外のラグジュアリー系のブランドは壁面側にゾーニングされている
交渉にかなり時間がかかったようですが、間に合ったのですか?
坂尻: ・・・ギリギリです。(笑)

武田: 期限に追い詰められて全員が浮き足立った時、課長から「こうなったらしょうがない。焦って中途半端な交渉して、判断を誤るのだけはやめよう。自分達の意思を通そう。」という言葉が出ました。それで我に返ったし、いいストッパーになりました。あれが開き直った瞬間だったんだって今気づきましたけど。(笑)

井上: 11月16日のオープン日がリミットだったけど、ウチが妥協して松屋銀座にふさわしくない売場になる方が、よっぽどよくない。正直、僕は年明けにまでずれ込んでもいい!と覚悟しました。事実、上司に「部分的にオープンさせて残りは年明け、という可能性もありますよ」って話もしました。

武田: プロモーションも実は大変だったのです。松屋は決して大きい百貨店ではないので、これまでは割合と限られた規模での媒体が中心でした。でも今回は全国的なコスメ誌(集英社刊MAQUIA)でブックinブック※2を仕込みました。雑誌なので2ヶ月前には掲載内容の確定や、撮影、原稿締切を迎えるのですが、オープン3週間前の時点で、まだ不確定の事もありましたから。編集の方にはずいぶんご無理をお願いしました。直前ですべり込んだ情報がかなりありますね(笑)

坂尻: 1ヶ月前に「出店できません」っておっしゃったお取引先もあったんです!私、結構気が弱いんで、リニューアルオープン初日に大雪が積もっていて、お客様もいない。どうしよう・・・?って途方に暮れる、そんな夢ばかり見て。でも、できあがりを見たら想定以上の出来で、新たな売場を初めて見たときは涙を流しそうでした。本当に理想通りの売場が出来たと思って。

武田: オープン日開店と同時に続々とお取引のトップの方々や各店バイヤー、商本部長が勢揃い!とあるお取引様から「店舗じゃなくフロアの改装だけで、これだけのメンバーが集まる瞬間ってないね」というような言葉を頂いたり、お世辞じゃなく本当にみなさん褒めてくださる。期待してお店に協力して頂いた皆様からの言葉に素直に感激しました。嬉しかったですね。もちろん何より、お客様の驚いていらっしゃる表情も印象的でした。「わぁ〜!」という声をあげていらっしゃる方も多くて。でも今は終わってホッとしたというより、逆に、始まっちゃった、という新たなプレッシャーを感じている状態なんです。

32Pにも及ぶGINZA BEAUTYのMAQUIA別冊特集

造作物の高さや柱回りの太さを規制することで、全体の見通しを向上させた

最後に、売場のココを見て下さい!というポイントは?
武田: 化粧品売場には他の百貨店にない、「美と健康」をテーマにした自主編集のコーナーを作りました。世界各国の自然の成分や処方にこだわったコスメや、顔だけではなくボディや体の内面のことまで広がりがある松屋銀座発信のブランドを揃えていますので、こういう感度のものもあるんだと新鮮に見て頂けるはずです。またメイクやスキンケアのゾーニングをしっかり分けられたので、他店と比べても本当に買いやすい売場になっているのではないでしょうか。

坂尻: 今回作ったイベントスペースは、学生さんにも買いやすいような売場なので、ぜひ遊びに来て下さいね。

武田: 実は化粧品売場のリニューアルには担当者が『倒れた』『入院した』などという話がつき物なんですが、今回わたしたちは幸いな事に、誰もそういう人はいませんでしたね。ヨカッタヨカッタ(笑)

井上:

二人には『松屋だけでしか通用しないバイヤーではなく、広く名が通った、業界自体を引っ張るようなバイヤーになって欲しい』 そう常々伝えてきました。このリニューアルで二人は数々の経験を通して、かなり力をつけてきたと思います。ただ私の期待するところはもっと大きいですから(笑)。これからがスタートです。二人には期待しています。

※1:ゾーニング=建築プランなどで、空間を機能や用途別に配置すること。
※2:雑誌の中に別建てで入る、本誌と同サイズの無線綴じ冊子。今回の場合は32P建て。

「美と健康」をテーマに世界各国からこだわりのスキンケアを集めたコスメセレクトゾーンGINZA BEAUTY “In”(写真はオープニングイベントのもの)



“In”ではスキンケアのプロ集団“コスメクルー”を始め、アロマ等の心を満たす商品も提供している
上)常設スペース( “In”)
下) “In”オープニングイベント “ロハスビューティー”

 
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