「ジーンズ製品の善し悪しは、Fabric(繊維)、Fit(シルエット)、Finishing(洗い加工)の3Fで決まります。この3つが噛み合って、初めて一流のデニムが生まれる。2つが100点でも1つが80点なら、全体が80点の評価になってしまう。3つ全てで100点を目指さなければならないのです」と貝原会長は語る。
例えば、B級規格のデニムで作られたジーンズが一本でも市場に出てしまえば、消費者の信頼を裏切ることになり、そのブランドには大きな傷が付く。ジーンズ一本のデニムがブランドの命運を左右するのだ。カイハラの品質に対する厳しい姿勢は、こうした事情を背景にしている。
品質の高さで世界が認める"KAIHARA DENIM"に
画像:カイハラ株式会社
カイハラのもうひとつの特徴は、その類い稀な商品開発力にある。デニムは使用する糸の太さ、染色法、更には洗い加工によって、多種多様な商品を作ることができる。洗い加工だけをとっても、ブリーチやストーンウォッシュ、ケミカルウォッシュなど、歴史と共にさまざまな技術が取り入れられてきた。またブーツカットやスキニーのように、シルエットにも大きな流行がある。
こうした変化を生み出すのは、最終製品を手掛けるジーンズメーカーだけではない。デニムメーカーが注文を待っているだけでやっていけたのは過去の話。カイハラは自らの手で新しい生地を開発し、年間700以上のサンプルを世界中のメーカーに提案しているという。しかも多くの場合、素材に合わせた製品の形に仕上げてプレゼンしているというから驚く。 「採用されるのはその1割くらいでしょうか。うちは業界で最も失敗している会社なんですよ(笑)」
カイハラでは、最前線で働く営業スタッフが常に最新のファッション情報を収集・分析し、自社の製品開発に役立てると共に、デニムを供給するジーンズメーカーにフィードバックしている。生地メーカーと製品メーカーが協力しながら市場を形成しているのだ。近年ブームになっているソフト&ライト系の機能性ジーンズに使われているデニムもまた、このような手法で生み出されたものだという。
独自の一貫生産体制が可能にした高品質と、他社の追随を許さない圧倒的な商品開発力。そこから生まれるカイハラ・クオリティーは、世界でもトップクラスにある。現在の海外供給先は20数カ国。広島の地場産業がつくるデニムは、世界が認める"KAIHARA DENIM"となった。